盲音の第三譜歌

□リソルート 〜決然と〜
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 しばらく進んだとき、ミツキが止まった。

「ミツキ?」

「……なんかいるぜ。魔物か?」

「この鳴き声は……」

「ユニセロス!」

 アニスの目がガルドに変わる。

「古代イスパニア神話に出てくる『聖なるものユニセロス』ですか?」

「そうです! 幻のユニセロスですぅ! 捕まえたら5000万ガルドは堅いですよっ!」

「ユニセロスは清浄な空気を好む魔物です。街に連れだしたりしたら死んでしまうかもしれませんよ」

「あうぅ……」

「それにユニセロスさん、なんだか苦しんでいるみたいですの……」

 あれ?

 ティアの中に障気はない。なんでいるんじゃろ。

 ところがユニセロスは突然ミツキに猛突進してきた。

「ミツキっ!」

「危ない!」

「!」

 予想外のことに避けそこねそうになったが、バックステップで飛んできたガイがひょいとミツキをつかんだ。

「おぉっと」

 そのままミツキを抱えて華麗にジャンプしてルークたちの許へ。

「救出成功―っと」

「ガイ……ありがと」

「まだアチラさんはくるつもりのようだが」

「うわっ、ユニセロスって狂暴なのかよ!?」

「そんなはずないよぅ! すっごく大人しくて人を襲ったりしないはずだよっ!」

「また来ますわ!」

 全員で一斉攻撃する。

 アリエッタは今お友達がいないので、譜術攻撃に切り替えている。というより、攻撃はほかのメンバーに任せて、イオンとミツキの守りに徹していた。

 ミツキが攻撃に出たくても、ミツキのは攻撃力が高すぎてユニセロスを殺してしまう。のでメンバーのレベル上げも兼ねて後ろに下がっていたのだが。

「ぎゃーっ、そっち行っちゃだめぇえ!」

 アニスの叫び通り、ユニセロスはミツキを狙っていた。

「ミツキ! 逃げなさい!」

 ジェイドの指示でミツキはとりあえず逃げ回った。イオンのそばには近寄らないようにして。

 そのうちユニセロスの方が体力つきて倒れた。

「傷を癒すわね」

 ティアがユニセロスを回復させる。

「しかし、この後どうするのですか? 目を覚ませば、また襲ってくるかもしれませんよ」

「ミュウとアリエッタに話をさせればいいんじゃないですか?」

「それでいいんじゃね? なぁ、ミュウ」

「はいですの。僕、がんばるですの!」

「アリエッタも頼みます」

「はい、です」

 目を覚ましたユニセロスとミュウが会話する。

「みゅ、みゅみゅ、みゅみゅう……」

「何言ってんのかさっぱりわかんねー」

 すると黙って聞いていたアリエッタが通訳した。

「この子、障気がきらいで、障気が近づいてきたからイライラして思わず襲った、と言ってるです」

「障気? この辺に障気なんて出てないぜ?」

「……ミツキが障気を吸ってるって言ってる、です」

 全員の視線がミツキへ行く。ミツキは首をかしげた。

「我? わっちか? ……そうかぁ、障気ねぇ」

「ちょい待てミツキ、他人事じゃねーぞ」

「何か心当たりがあるのですか?」

「ない」

 きっぱり。

「……わけでもない」

「どっちだよ」

「ミュウ、わっちがどのくらい障気を吸ってるか分かるか?」

 ミュウはユニセロスに質問した。ミュウは振り返って結果を告げた。

「吸った量はすごいですの。でも、大半は除去されていて、微妙に残ってるそうですの」

「そうか……」

 やはり全部除去するのは時間がかかるか。

「悪かったなユニセロス」

 ユニセロスは一鳴きすると走り去って行った。

「おい、行っちまったぞ」

「今のはティアさんへのお礼ですの。怪我を癒してくれてありがとうって言ったですの」

「そう……それにしてもどういうこと? ミツキ」

 ティアの言葉に一同の視線がミツキに行く。

「言葉のとおりじゃろ。なんだかんだで障気の渦巻く場所に行ったり来たりしてるし」

「でもそれなら俺たちも同じじゃん」

「ユニセロスはミツキを指定していましたね」

「一番吸い込んだ量が多かったんじゃろ」

「んなわけないだろー」

「……ミツキ、何かまだ隠してるでしょ」

「さ、セフィロトへ行こー!」

 ミュウを頭に乗せるとミツキは先に歩き始めた。

「あ! 待ってですミツキ!」

「また何か隠してーっ!」

 元導師守護役と現導師守護役が追いかけた。

「……あれは何か隠してるぞ」

「まだ爆弾を抱えているようですねぇ」
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