盲音の第三譜歌
□リソルート 〜決然と〜
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シェリダンに戻り、集会所に行くとご老体たちが集合していた。
「おお、よく戻ったの」
「ただいまじーちゃん。これが計測結果」
測定器を渡すミツキ。
「こっちは今、タルタロスを改造しているところさ」
「タルタロスを?」
「タルタロスは魔界に落ちても壊れなかったほど頑丈だ。地核に沈めるのにはもってこいなんだよ」
「タルタロスは大活躍ですねぇ」
「……タルタロスのラストの大仕事だ」
「まだ準備には時間がかかる。この街でしばらくのんびりしてるといいぞい」
集会所を出ればルークが声をかけた。
「なぁ、ちょっといいか」
「どしたの?」
お、このイベントは。
「ずっと考えてたんだけど、大陸の降下のこと、俺たちだけで進めていいのかな?」
「どういうことぉ?」
「世界の仕組みが変わる重要なことだろ。やっぱり伯父上とかピオニー皇帝にちゃんと事情を説明して協力し合うべきなんじゃないかって……」
「ですがそのためには……バチカルに行かなくてはなりませんわ」
「行くべきなんだ」
「ルーク……」
「街のみんなは命がけで俺たちを……ナタリアを助けてくれた。今度は俺たちがみんなを助ける番だ。ちゃんと伯父上を説得してうやむやになっちまった平和条約を結ぼう。それでキムラスカもマルクトもダアトも協力し合って、外殻を降下させるべきなんじゃないか?」
「……ルーク……ええ、その通りだわ!」
「いいんじゃないですか?」
だがナタリアは俯いた。
「……少しだけ考えさせてください。それが一番なのはわかっています。でもまだ怖い。お父様がわたくしを……拒絶なさったこと……。ごめんなさい」
ナタリアが去って行った。……結果知ってるけど、心まで左右できないのでミツキにはどうにもできない。
「仕方ない。ナタリアが決心してくれるまで待つしかありませんね」
「……なぁ、ミツキ、俺間違ってる?」
不安そうにそう聞いてきたルークに、ミツキは笑って首を振った。
「君らが間違えたことは一度もない。……インゴベルトはそこまで愚かな人ではない」
「それって……」
アニスが言いかけたのを、ミツキが口に人差し指を当てて止めた。
「預言は未来を映す鏡。だが、あくまで選択肢の一つであり、人心まではどうにもできない。……ナタリアなら大丈夫だ。一番説得力のある最強の説得人が説得してくれる」
「「「「「「?」」」」」」
解散ーっ、と、ミツキは一人宿に引き上げて行った。
§ § §
ルークが立ち聞きするのを、ミツキは見逃さなかった。
「こんにちはー」
「うわっ! ミツキっ……」
「しっ、バカ者。大声を出すな」
「何してんだよっ」
「そっちこそ立ち聞きなんてしおって。……野次馬根性だ。最強の説得人がちゃんとくるかどうか見に来たんじゃ」
「……あれか」
アッシュが現れた。
「……バチカルに行くんじゃないのか?」
「知っていましたの!?」
「……怯えているなんてお前らしくないな」
「わたくしだって! ……わたくしだって、怖いと思うことぐらいありますわ……」
「そうか? お前には何万というバチカルの市民が味方についているのに?」
「……わかっています、そんなこと」
「……いつか俺たちが大人になったらこの国を変えよう。貴族以外にも貧しい思いをしないように、戦争が起こらないように」
「……死ぬまで一緒にいて、この国を変えよう」
最強のプロポーズじゃな(笑)。
「……あれはお前が王女だから言ったわけじゃない。生まれなんかどうでもいい。おまえができることをすればいい」
そのナタリアへの優しさをちょびっとでいいからルークにわけてやれ。