盲音の第一譜歌
□アンプロンプチュ 〜即興曲〜
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神託の盾本部の執務室にいたヴァン・グランツは、窓の外を見やって眉をひそめた。
弄りつけるような雨。激しく窓をたたくその勢いに、言い知れぬ異様さを感じた。
何だ。
記憶違いかもしれないが、こんな大雨は預言に記されていただろうか。
そして思い当たったのは、今朝の夢。
ローレライの声がしたのだ。
『ND2015、栄光をつかむ者、女を保護す。女は長き旅を終え、失われた居場所を求める。預言を滅ぼすために孤独の戦士となるだろう』
あれは予言だった――私に関する。
扉の向こうから女性の生真面目な入室を告げる声がした。
「失礼します。閣下、ご報告を……」
リグレットはそんな上司を一目見て同じく眉をひそめた。
「閣下?」
気づいて「ああ」とだけ返事し、席を立った。
「すまないが出直してくれ――少し風に当たってくる」
そう言って早足で出て行った閣下を止めようとリグレットは少し腕を伸ばした。
風って言っても外はものすごい雨なんですが……。
ぱたんと戸が閉まる音の後に、リグレットは心配な顔でつぶやいた。
「……おなかでも壊されたのかしら」