盲音の第二譜歌
□アリエッタ
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コーラル城へ行くまでは大変だった。
廃棄されたこともあり道が整備されていない。ミツキにはかなりの負担だった。イオンと手をつないでいて、何度か転びそうになったときイオンに助けられた。情けない。
そして、ぼろぼろのお城に辿り着いた。
「うわ」
「ここが俺の発見された場所……?」
「なんか出そう……」
「いるぞ」というミツキにジェイド以外が「え」と固まった。ミツキの目は『見えないものが視える』ともっぱらの噂。ま、まさか……。
「かなりいるなぁ。住みついてるわ」
「そ、そんな……!」
いよいよ震えだした一同に、ミツキはにっこり微笑んだ。
「魔物が、な」
「!」
「んだよ!」
「脅かすなよミツキ……」
「そうだよ! ミツキが言ったらホントにいるみたいじゃん!」
「ははは。さぁ、行こうか諸君」
「あ、ミツキ、危ないですよっ」
「イオン様も危ないですっ! 二人とも待ってーっ」
中に入って、ガイはルークにたずねた。
「どうだ? 何か思い出さないか?」
ルークは考えたが何も浮かばなかった。当然だ。
(七年間しか……)
その前の記憶はないはず。
『記憶を疑う前に、記憶に疑われている』んだから。
「ルーク様は昔の記憶がないんですよね? ルーク様おかわいそう。私、記憶を取り戻すお手伝いしますね!」
「おかしいわね。もう長く誰も住んでいないはずなのに、人の手が入り込んだ形跡があるわ」
「アリエッタが入り込んだというのもあるが。相当前から使われてなかったんだろ? 魔物くらい住み着くさ」
「はいですの、魔物いるですの。……気配するですの」
「いるなぁ」と言えば、ミュウはミツキを見上げた。
「ミツキさんはどうして魔物がいるかどうか、わかるですの?」
「ん? 私はな、見えないものが視えるからだ」
「? わからないですの……ミツキさんはずっと目が見えないんですの?」
その言葉に「おいブタザル」とルークがミュウをつまみあげた。
「てめぇな。そーゆーことはさらっと聞くんじゃねぇの」
「おやルーク、意外ですね。あなたが他人に気を遣うなんて」
確かに。
「うるせぇ」
「どうしてですの?」
ティアが慌ててミュウを止めに入った。
「ミュウ、あのね……」
するとミツキが明るい声で笑った。
「ははは。別に気にせんでいいぞ、ティア、ルーク」
ミツキはミュウを抱きあげた。
「もともと普通に見えていたんだ。だが、事故で見えなくなってな。十四の時だ」
「それからずっと、見えないですの?」
「まぁ、本来の意味の視力はないな。でも光があれば影が見えるし、触れれば色形まで把握できるから問題ない」
「光が見えるなら、どうしてずっと目をつむっているですの?」
さすが聖獣チーグル。頭がいい。
「光に弱いんだ。昼間の太陽は特に目に悪い。耐えられないし、どーせ視界はモノクロで一緒だから後生大事に閉じてるのさ。質問は?」
「もうないですの。ありがとうですの! 僕、ミツキさんが転ばないように守るですの!」
「そりゃぁ心強いな」
ホントに何でもない風に笑うミツキに、一同は各々違和感を覚えていた。どうして……こんなに他人事のように笑えるのか。
「ささ、行くぞルー君」
「待てよ! 俺より先に行くなぁ!」
「待ってよルーク様、ミツキ! イオン様っ、早くっ」
「はい」
「やれやれ……我々も行きましょうか」
「そうだな」