盲音の第二譜歌

□ファシーレ 〜軽く易々と〜
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 オアシスで少し元気を取り戻し、一行はザオ遺跡に辿り着いた。

「ここがザオ遺跡か……」

「うー、バチカル廃工場に続いてまた暗いとこか……」

「腕をお貸ししますよ」

「……なんかすまんな、ジェイド」

「いえいえ。あなたが転んで怪我したら、誰が魔物をやっつけるんですか?」

「前言撤回。やっぱてめー鬼畜だわ」

「とにかくイオン様がいるかもだから、進もうよ!」

「あ、アニス! 先に一人で行っては危険よ!」

「大丈夫だティア、この辺の魔物は大したレベルじゃない」

「そ、そう……?」

 追いついたのは、二手に道が分かれているところだった。アニスが振り返って、たずねた。

「どっちだと思う?」

 すると答えたのはミツキだった。

「まっすぐだ。行き止まりだが、異様な音素の集合体を感じる。確かめた方がいい」

「よし、まっすぐだ」

「お、素直だなルーク」

「だってミツキほど正確な音素センサーもいねぇだろ」

「ルー君、ちょっとツラ貸そうか?」

「スンマセンデシタ!」

 と、ガイを盾にするルーク。

「分かればよろしい。さ、行くぞ」

 しばらく進めば、ミツキにも視えた。

 淡くオレンジをまとう音素の塊が、暗闇に浮いている。

「なんだこれ」

「ルーク、迂闊に近付いては危険よ」

「でもきれいですわ……危険なものには見えません」

「大丈夫だ、第二音素の塊だ。ミュウ、こっちおいで」

 ミツキがミュウを手繰り寄せて音素の下に連れて行った。ソーサラーリングが音素を吸収する。

 ミュウはミュウアタックを習得した。

「もし今後も音素の塊があったら進んで吸収するといい」

「わかったですの♪ それにしても、ミツキさんはなんでも知っているのですの」

「そらー、傭兵だしな」

「傭兵、ねぇ……」

 ジェイドが意味ありげに呟いたのは、誰にも聞こえなかった。

 緑の記憶陣のところまで順調に進み、ミツキは思い出した。

 このあとシンクとラルゴとバトルんじゃなかったっけ?

「ミツキ? どうしました?」

「……いるぞ、この奥に」

「!」

「ミツキがいるっていうときは……」

「いますねぇ」

「誰だかわかるかい?」

 ミツキは念のため神経を集中させて奥にある音素の影を視た。この音素は間違いなく――。

「……イオン、アッシュ、シンク、ラルゴ」

「厄介な相手ね……」

「んなもん、ミツキがちょちょいと譜術をぶっぱなせば……」

「いえ、無理ですルーク」

「……んでだよ」

「はぁ……あなたはもう少し自分で考えなさい」

「だからなんだよっ」

「あのなルーク」とガイが丁寧に教える。

「バチカル廃工場でも、このザオ遺跡でも、魔物がいてもミツキは俺たちのピンチ以外は戦闘に出なかっただろ? なぜだかわかるか?」

「? なんでだ?」

「あそっか」とアニス。

「暗いし足場が悪いから、ミツキは思うように戦えないんだ」

「そう言われてみれば、どちらも暗い場所ですわね……」

「それで大佐はミツキを気にかけておられたんですね」

 なんとなく空気がマイナス方面に流れた気配がして、ミツキは苦笑した。

「そんな顔するな諸君」

「え? 私たちの顔も視えちゃってるの?」

「いやアニス、気配で分かる。……そんなに気にしてくれなくても、ずっと傭兵をしていたから心配しなくていいぞ。それにラルゴもシンクも強い。私も戦闘に参加しよう」

「いえ、あなたは下がっていてください。この遺跡は普通のフィールドより足場も悪い。何より明かりが少なくて暗い。道中の魔物との戦闘で、ルークたちのレベルも上がってきています」

「そうさ。君は後ろで応援していてくれ」

 美月は内心ため息をついた――こんなに優しい彼らをだましていることに心が痛む。

「では、お言葉に甘えてそうさせてもらう」

「まっかせてよミツキ☆ ささ、行こう!」
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