盲音の第三譜歌
□飛翔
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シェリダンについたら、ガイ・パラダイスだった。
「おぉ〜! すっげー!」
ガイのテンションが上がりにあがりまくっている。
音機関パラダイスだからだ。
「見ろよルーク! 珍しい音機関があちこちに……!」
「ガーイー」とミツキが笑顔で後ろから止めた。
「インディグネイションとアカシックトーメント、どっちがいいかな?」
「す、すいませんでした!」
「「「「「「……;」」」」」」
「分かればよろし。さ、行くぞ。奥に元気なご老人達がいるはずだ」
「ふぇ? ミツキってば、シェリダンにも知り合いが?」
おっとぉ口を滑らせてしまった。
「まぁな。このキャパシティコアを作る時に、神託の盾から出られないディストの代理で来たことがある……ベルケンドだけでは作れず、ここにも来たんだ」
と、ミツキはおくれ毛に通してあるリングを指す。
「……それはディストが作ったのですか?」
お、死霊使いが反応した。
「ああ。制御装置だ。理論はミュウのリングと同じだな」
「制御装置? お前、何を制御してるわけ?」
「簡単にいえば音素か。ジェイドの譜眼とは違うが、全部の音素が使える体質でな。もし本気の本気になれば音素が暴走して危ないそうだ。危険に思ったヴァンが、ディストに相談して、これを作ったわけ。普段はどんなに頑張っても八割程度しか能力を発揮できない」
「まぁ、あなたの場合、六割弱でしか戦っていないようですが」
「まぁな♪」
「そのリング、見せてもらっていいですか?」
「どーぞ」
と、ミツキはおくれ毛をほどいてリングを外した。ほどいた黒髪はさらりと流れて腰の下まで落ちた。
「ミツキさんのリングも、魔物と話せるですの?」
「いんやミュウ。話すのは無理だな。ミュウのリングのように能力を底上げするものもあれば、このリングのように能力を抑え込むものがある。これは後者だ。だから譜を刻んでパワーアップとかもできない」
「……確かに刻まれているのは制御の譜陣ですね……」
「旦那、俺にも見せてくれ」
というので片方のリングをガイに差し出す。受け取ったガイも内側に刻まれている譜を見た。
「へぇ……これは二つで一つのキャパシティ・コアか……」
「「…………」」
ルークとティアはぼーっと美月の黒髪を眺めていた。おくれ毛だけとはいえ、長くて風にさらわれてふわふわ浮いている。
「二人とも、どうなさいましたの?」
「へっ?」とティアが我に返る。
「いや……ミツキの黒髪ってやっぱり珍しいなーって、思ってさ」
「確かにそうだよねぇ……しかも意外にくせがなくてサラっサラだもん」
「確か、ナタリアの母君も黒髪でしたね」
「ええ。ですが、彼女ほど真に黒かったかと言われると……」
「でもでも、アニスちゃんもそこそこだと思うけど、ミツキを見ちゃうと自信なくすよね。頭良くて器量よくて美人で」
目の毒になるほどの美人だ。普通の人なら話すのも難しいほど。本人は気付いていないようだが。
「確かに、あんなにきれいな方、上流階級でもおりませんわ」
「おまけに強ぇし」
「八方美人とは彼女のことね」
「確かにいい目の保養になりますねぇ」
「うわ、大佐」
「まぁ、連れ歩いていたら自慢になるしな」
「……本人はつゆほど気づいてないようですが」
「おーい諸君、行くぞー」