盲音の第三譜歌

□軍隊行進曲
1ページ/14ページ


 シュレーの丘はなんだかよくわかんない石で封印されていた。

「ルー君、あの赤い石にミュウファイアだ」

「おう」

 ブオン、と入口が現れた。

「うわ」

「マジか」

「やっぱミツキいると便利〜」

「む。嬉しいような嬉しくないような……」

「でも歩き疲れたよぅ……」

「確かに、丘っていうだけあって……」

「疲れますわ……」

「なー、なんか面白い話ねぇの?」

「ありますよV」

 お、この流れは。

「シュレーの丘にまつわるこわーいお話が♪」

「まぁ、わたくしそういうの大好きですわ」

「な、何を言ってるのよ! ばかばかしい!」

「まぁまぁそうおっしゃらず……今も昔も、このあたりは国境線をめぐって戦争が繰り返し行われてきました。七百年ほど前にもこのあたりで大きな戦があり、そのときの死者は、積み上げると山ほどの大きさになったといいます」

「まぁ、なんてひどい……」

 ナタリアは平気そうだ。もうすでにティアは戦々恐々としている。

「その当時、高名であった譜術士のシュレーは、死者たちを弔うために彼らの遺体を音素に組み替え、丘を作り上げました」

「ちょ、ちょちょちょちょ、ちょっと待ってください!」

 アニスが、みんながたどり着いたであろう結末を口にする。

「待ってくださいよぉ! そ、それってじゃぁ……このあたりはもともと――」

 ジェイドが眼鏡を白く光らせてほほ笑んだ。するとミツキとイオン以外が悲鳴を上げた。

「ぎゃー!」

「うわー!」

「うぉー!」

「きゃー!」

「……」

 ティアはあっちの世界へ飛んでいた。

「まだ話のオチまでたどり着いてないんですが……イオン様とミツキは驚かないんですか」

「七百年前にこの辺で戦争は起きていませんから。ミツキは?」

 と振り返れば、彼女はじーっとある一点を見つめたままだ。

「おや、あなたも怪談話は苦手ですか?」

「いや、苦手も何も――」と、彼女はそこを指さした。

「いるもん」

「い、いるって……?」

「だからルー君、さっきからこっちをガン見している半透明な……」

「「「ぎゃぁあああああっっっ!」」」

 ルークとアニスとガイが猛ダッシュで逃げた。イオンはアニスに引っ張られてそのまま連行された。

「お、お待ちになって!」

 ナタリアがパタパタと後を追った。やれやれとジェイドが肩をすくめる。

「団体行動を乱すのはよろしくないのですが……あなたもひどい大人ですね。嘘にしては刺激が強すぎますよ」

「え、だって、マジで視えるし」

「……そうでした……あなたには視えるんでしたよね……」

「まぁな。さ、行くぞティア」

 固まったままのティアの手を引いて、奥へ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ