盲音の第三譜歌
□軍隊行進曲
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シュレーの丘はなんだかよくわかんない石で封印されていた。
「ルー君、あの赤い石にミュウファイアだ」
「おう」
ブオン、と入口が現れた。
「うわ」
「マジか」
「やっぱミツキいると便利〜」
「む。嬉しいような嬉しくないような……」
「でも歩き疲れたよぅ……」
「確かに、丘っていうだけあって……」
「疲れますわ……」
「なー、なんか面白い話ねぇの?」
「ありますよV」
お、この流れは。
「シュレーの丘にまつわるこわーいお話が♪」
「まぁ、わたくしそういうの大好きですわ」
「な、何を言ってるのよ! ばかばかしい!」
「まぁまぁそうおっしゃらず……今も昔も、このあたりは国境線をめぐって戦争が繰り返し行われてきました。七百年ほど前にもこのあたりで大きな戦があり、そのときの死者は、積み上げると山ほどの大きさになったといいます」
「まぁ、なんてひどい……」
ナタリアは平気そうだ。もうすでにティアは戦々恐々としている。
「その当時、高名であった譜術士のシュレーは、死者たちを弔うために彼らの遺体を音素に組み替え、丘を作り上げました」
「ちょ、ちょちょちょちょ、ちょっと待ってください!」
アニスが、みんながたどり着いたであろう結末を口にする。
「待ってくださいよぉ! そ、それってじゃぁ……このあたりはもともと――」
ジェイドが眼鏡を白く光らせてほほ笑んだ。するとミツキとイオン以外が悲鳴を上げた。
「ぎゃー!」
「うわー!」
「うぉー!」
「きゃー!」
「……」
ティアはあっちの世界へ飛んでいた。
「まだ話のオチまでたどり着いてないんですが……イオン様とミツキは驚かないんですか」
「七百年前にこの辺で戦争は起きていませんから。ミツキは?」
と振り返れば、彼女はじーっとある一点を見つめたままだ。
「おや、あなたも怪談話は苦手ですか?」
「いや、苦手も何も――」と、彼女はそこを指さした。
「いるもん」
「い、いるって……?」
「だからルー君、さっきからこっちをガン見している半透明な……」
「「「ぎゃぁあああああっっっ!」」」
ルークとアニスとガイが猛ダッシュで逃げた。イオンはアニスに引っ張られてそのまま連行された。
「お、お待ちになって!」
ナタリアがパタパタと後を追った。やれやれとジェイドが肩をすくめる。
「団体行動を乱すのはよろしくないのですが……あなたもひどい大人ですね。嘘にしては刺激が強すぎますよ」
「え、だって、マジで視えるし」
「……そうでした……あなたには視えるんでしたよね……」
「まぁな。さ、行くぞティア」
固まったままのティアの手を引いて、奥へ。