盲音の第三譜歌

□漆黒の髪の乙女 〜亜麻色の髪の乙女より〜
1ページ/16ページ





 牢屋に入れられたルーク御一行。

「ミュウ〜アタッーク!!!」

 がんっ!

 鈍い音を立ててミュウは弾き飛ばされた。

「みゅぅう……」

 なんと頑丈な檻なんだろう。

「ミュウ、もういいわ。ミュウアタックじゃ無理よ」

「武器は取り上げられるし、踏んだり蹴ったりだなぁ」

「ガイ〜。んな呑気な事言ってる場合じゃないよぅ……」

「どちらにせよ、我々の命を取るつもりはなさそうですね。ホントにミツキを引き寄せる餌にしただけのようです」

「ミツキ……先ほど女がひとり、神託の盾から逃げ出したと噂が立っていましたが……」

「彼女かもしれないな」

「モースの軟禁から逃れた、ということでしょうか」

「兄さんのことよ。ミツキのことを警戒して、何か仕掛けているに決まっている」

「……せめてアッシュとつながってりゃなぁ……」

 ルークはさっきからアッシュに話しかけているのだが、やっぱりこちらからは無理だった。

 肝心の時に役に立たない被験者である。

 そのとき、牢屋の外が騒がしくなった。

『いやっ! 放して!』

『このヤロっ、放しやがれ!』

「! この声、根暗ッタとアッシュだ!」

 直後、アリエッタとアッシュが神託の盾兵に捕まって牢屋に入れられた。

「きゃっ!」

「根暗ッタ!」

「アッシュ!」

 六神将二人組は隣の牢に入れられた。

「アニス! ……イオン様も!」

「アッシュ!? お怪我は……!?」

「くそっ……ナタリア、お前たちもか!?」

「あなたに言われたくないですねぇ」

「黙れ眼鏡」

「傷つきますねぇ」

 アッシュがピリピリしているのは(いつものことだが)なんとなくわかった。ひょっとしなくても……。

「おまえもミツキがらみで捕らえられたりする?」

 ルークが聞くとアッシュはフンと顔をそむけた。

「総長は何考えてるですか……?」と、アリエッタがうるうるとイオンを見上げる。

「アリエッタ……」

「総長は、ミツキを傷つけたりしないと言ったです。なのに……この倉庫の裏に、いっぱい強い魔物がいたです」

「魔物……それよりここはどこなんですか?」

「ベルケンドの廃棄された倉庫だ。おまえたち、知らずにつれてこられたのか?」

「目隠しされて連れてこられたんです。アッシュ、この建物の内装はわかりますか?」

「……そんなことを聞いてどうする」

「ミツキが来た場合の脱出経路を考えなくてはいけませんので」

「はっ、どうだか。おまえたち、バチカルへ来る前にミツキを尋問してたみたいだが」

「!」

 ルークたちの表情を見てアッシュが笑う。

「尋問してきた相手をはいそうですかと助けるアホがどこにいる? いくらミツキでも、そこまでお人y……」

「ミツキはそんな人じゃないもん!」と、アリエッタのぬいぐるみがアッシュに飛んできた。後頭部にクリーンヒットしてアッシュは頭を抱えた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ