盲音の第三譜歌

□センティメンターレ 〜感傷的な〜
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 ベルケンドからダアトって、んでこんなに遠いのか。

 晩御飯も終わって、一同は各々好きに過ごしていたが、ミツキに気を使って彼女の船室には近づかず、一同はアルビオールのダイニングとも呼べるキッチンの隣の大部屋で、好きなことをしていた。

「今まで空飛ぶアルビオールに慣れっこだったから、遠いよぅ……」

「いや、船よりはるかに速いだろ」

 とアッシュがつっこめば、アリエッタも頷いた。

「魔物の三倍です」

「魔物と比べてどうすんだよ……」

 苦笑いのガイ様。

「僕はタルタロスでの移動が慣れているので、連絡船より快適に思えます」

「えー、プリンセスナタリア号のほうがいいですよぅ、ナタリアもティアもアリエッタもそうでしょ〜?」

「男は黙ってタルタロスだろー。なぁ旦那?」

「タルタロスはマルクト軍の船ですからねぇ」

「愛着はあるよな……」

「単なる男女の差だろ」

「まぁアッシュ。聞き捨てなりませんわ」

「ミュウはどっち?」

 ティアに聞かれて、テーブルの上に座っていたミュウは耳を揺らした。

「ミュウはどちらでもいいですの。今までで一番だったのは、ミツキさんの譜術のお船ですの♪」

「……譜術の船?」

「はいですの。チーグル族は北にあるキノコロードへキノコを採りに、一斉移動しますの。でも遠すぎて、道中魔物もいっぱいで、けが人が多いですの。困った族長が、ミツキさんに頼んで、その時期に一斉移動できるように頼んだですの。ミツキさんが書いた譜陣の上に乗ると、気づいた時には別の場所にいるですの♪」

「それって……ワープとかに使う譜陣のこと?」

「よくわからないですの……チーグルたちは譜陣の船と呼んでいるですの。ミツキさんの目は音素が見えるから、そんな荒業もできると族長は言ってたですの。僕もキノコを採りによく使ったですの」

「そういえば……彼女は音素が目視できるんでしたわよね……」

「確か普段は光と影で物を見分けているとか」

「でもでも、結局光に弱いんでしょ、ずっと目を閉じちゃってるもん」

「……まぁ、それだけじゃないみたいだけどな」

 ボソッとつぶやいたルークのつぶやきは聞き逃されることはなかった。

「おいレプリカ。何か知ってるのか?」

「へ? い、いや別に……」

「おやルーク、何か知っているようですねぇ」

 ジェイドの眼鏡が光る。

「い、いや、知らない。知っててもミツキが怖くて言えない」

 そーっと移動するルーク。

「ガイ、アニス、ルークを確保」

「はーいV」

「悪いなルーク」

 ガシッと両サイドからルークを捕まえる。

「裏切り者ぉーっ!」

「ルーク、ずるいですわ」

「そう……なのかしら……」

「ティア。ルークだけ僕たちの知らないミツキの秘密ごとを抱えているので、ずるいに入りますよ」

「イオンーっ(泣)」

「とっとと吐く、です。じゃないと、ミツキに直接聞く、です」

「結局バレんじゃん! お前らなれ合ってるけど敵同士だぞ!?」

「黙れレプリカ。大人しく吐け」

「黙んのか黙らないのかよく分からねぇなオイ! ……まぁ二年近く経ってるから時効だよな。実は……」

 そのときルークの後頭部に白い杖が飛んできた。

「ぐはっ!」

「ナイスショットーぉ」

 すがすがしい笑顔でミツキがやってきた。その笑顔のまま、蹲るルークの胸倉をつかむ。

「ぺらぺらしゃべる悪い口はどれかなぁ? あ、これかぁ。どれどれ」

「わーっ! ごめんなさいすいませんもう言いません!」

 ひょいっとガイを盾にする。

「俺を盾にするなーっ!」

「む。女性恐怖症のガイを盾にされたら手が出ない。なかなか賢しい知恵をつけたなルー君」

「だいたいなんでいるんだよっ! 大人しく寝てたんじゃないのか!?」

「いやそれがなぁ、今後のことを考えたらもう目が覚めちゃって☆」

「遠慮しないで大人しく寝てろーっ!」

「ぶーぶー。ルークだけずるいよぅミツキ」

「? なんの話?」

「ふぇ? 聞いてなかったの? ……てっきり聞いてたのかと」

「いやぁ、自分の危機になると勘が働く性分で」

「便利だなオイ。……お前の目のことだよ」

 あきらめて、でも最後のわずかな抵抗で小声でそういうルーク。ミツキは首をかしげて自分を指さした。

「これ?」

「「「「「「「「「それ」」」」」」」」」

「ミツキさんは光で物を判断しているのに、閉じていては効果二分の一でもったいないという話をしていたですの」

「ブタザルーっ(泣)」
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