盲音の第三譜歌

□ドレンゲント 〜緊迫した〜
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 翌朝、シェリダンに戻るアルビオールの中で、イオンが美月の様子がおかしいことに気づいた。

「……ミツキ? どうしました? 眠れませんでしたか?」

 ミツキは顔をあげると、いつもみたいに苦笑した。

「んぃや? ぐっすり寝たよ」

「……何かまずいことでも起こるのか?」

 ルークが不安そうにそう聞いてきた。するとミツキは意地悪な笑みを浮かべた。

「あるぞ〜。もううっとうしいぐらい残念なことが」

「……ミツキがそういうときって……」

「危ないのよね……」

「詳しいことが聞きたいですねぇ〜」

「お断りぃ♪ あ、そうだアリエッタ」

「なんですか?」

「お友達を大量に呼んでおいてくれないかな? シェリダンの人に話はついてるから、襲われることもないよ」

「わかったです。何か声を大きくするもの、ありますか?」

「拡声機のこと?」

「はいです。魔物の言葉は、人間には聞き取れない音も発しています、です。その音は、どこにいようと、お友達は聞きとれるはずです」

「アルビオールの機能にあったと思うぞ。ノエル!」

「あ、はい! こちらにあるので、お使いください」

 操縦席に駆け寄り、アリエッタは無線機のマイクっぽいものに、何か話した。

 確かにそれは人間では聞き取れない。

 するとどこからともなくアリエッタのお友達と思われる魔物(おもに鳥)がアルビオールの周りを囲んだ。

「すごっ!」

「うわぁ、条件反射で警戒しちまうなぁ」

「これで一個小隊の完成だ」と、ミツキは頷く。

「アリエッタのお友達を使って、どうするんですか?」

 イオンの問いにミツキはほほ笑んだ。

「後のお楽しみV」

§ § §

 シェリダンについたらそそくさと集会所に向かった。

 その道中、ずーっとミツキは考え込みっぱなしで、ティア達も心配したが、彼女に言うつもりはないらしい。

 集会所のおじーちゃんたちはこちらに気づいて、手を挙げた。

「おお。タルタロスの改造は終わったぞい」

「ありがとな、じーちゃん」

「ふぉふぉふぉ。年寄りを舐めるなよ。タルタロスはシェリダン港につけてある」

「あとはオールドラント大海を渡ってアクゼリュス崩落跡へ行くださ。そこから地核に突入するんだよ」

「ただ注意点がいくつかあるぞい。作戦中、障気や星の圧力を防ぐためタルタロスは譜術障壁を発動する。これは大変な負荷がかかるのでな。約130時間で消滅してしまう」

「130時間ってずいぶん半端だな」

「負荷が強すぎるんでな。ここからアクゼリュスへ航行して地核までたどり着く時間を逆算してなんとか音機関を持たせているんじゃ」

「それと、高出力での譜術障壁発動には補助機関が必要なんだよ。あんたたちが地核突入作戦を開始すると決めたらあたしらがここから狼煙を上げる。すると港で控えているアストンが譜術障壁を発動してくれる」

「つまり俺たちがこの街を出発する瞬間から、限られた時間も消費されていくってことだな」

「ここからアクゼリュスまでタルタロスで五日。地核突入から脱出までを10時間弱で行えということか。……これは厳しい」
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