盲音の第一譜歌
□オーバチュア 〜序曲〜
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できることならば、外には出たくないのだが。
白杖と呼ばれる盲人が使う杖を持ち、外に出た。
すぐに、都会の薄汚れた空気が鼻をつく。
まぶたの裏まで日の光が差す。目を開けたところで見えるわけでもないし、光にも弱いため仕方なく一日中目は閉じている。本当は光を頼りに物陰を見極めたいのだけれど、日だまりは強すぎる。
玄関は階段の上にあるので、地上へ降りるには階段を使わなければならない。
正直今でも怖いから、出かけるのはなるべく避けたいのだが、仕方ない。
片足を一歩投げ出した――その時だった。
(!)
軽い浮遊感と、杖の先が宙を切る気配。
忍び寄る恐怖と、脳裏を過る最悪の状況。
(落ちる……!)
次に襲ってくるであろう衝撃に備えて体を強張らせた。