盲音の第二譜歌

□セクステッド 〜六重奏〜
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 その後、神託の盾が撤退して行った。

「しまった……ラルゴをやり損ねましたか」

「あれが六神将……初めて見た」

 ガイが感心したように言う。

「六神将ってなんだ?」

 はてなを浮かべるルークにイオンは丁寧に教えた。

「神託の盾の幹部六人のことです。もっとも、兵たちの間ではミツキのことも暗に入れて指しますが、ミツキは団員ではないのでとりあえず六人なんです」

 私がいたら七神将になってしまう(笑)。

「でも、五人しかいなかったな」

「黒獅子ラルゴに死神ディストだろ。烈風のシンク、妖獣のアリエッタ、魔弾のリグレット……と、いなかったのは鮮血のアッシュだな。それから、盲音のミツキ」

「彼らはヴァン直属の部下よ」

「ヴァン師匠の!? ミツキ、お前もか!?」

 その言葉を否定する前に、イオンが「いえ」と説明した。

「ミツキは先ほど言ったように、神託の盾ではありません。一般人です。ただ、とても強くてヴァンと互角で、当初は彼女をディストの代わりに六神将に入れようとしていたようですが……」

 イオンの視線を感じて美月は頷いた。

「ああ、確かに誘いはあったな。何度も神託の盾に入れー入団しろー幹部になれー六神将に入れーって。でもな、あんまりしつこいから髭を締め上げたら諦めてくれたぞ☆」

「……俺らの知らない間にそんな武勇伝立ててたんだ、君……」

 ヴァンをシメた、といえばさすがに全員引いた。

「でもミツキ、なんで断っちまったんだ?」

 ルークから見ればとてもうらやましい話なんだろう。明らかに「もったいない」という翡翠の目をしてくる。

「ミツキは一匹狼主義なんですよ」とジェイド。

「一匹オオカミぃ?」

「実は皇帝陛下もミツキをマルクト軍へしつっこく誘っていたのですが、同じように断られました。なんでも、組織に入るのは嫌だそうです」

「そういえば、ナタリア姫の誘いも断ってたよな、君」

 バチカルからも同じように誘いがあったが、一蹴した。

「だってさー、どこかに入っちゃったら、イオンの臨時護衛できなくなるだろ。お給料いいしイオン癒されるしアニス可愛いし目の保養になるのに。あ、私見えてないんだっけ。まあいいや心の保養になるし」

「六神将が動いているのなら、戦争を起こそうとしているのはヴァンだわ」

 ティアが真面目に言い切る。ああ、せっかく和ませていた空気が。

「六神将は大詠師派です。モースがヴァンに命じているのでしょう」

「大詠師閣下がそのようなことをなさるはずがありません! 極秘任務のため、詳しいことを話すわけにはいきませんが、あの方は平和のための任務を私にお任せくださいました」

 ティアさんティアさん、探しているその第七譜石には世界の終りが書いてありますヨ。

「ちょっと待ってくれよ! ヴァン師匠だって、戦争を起こそうなんて考えるわけないって!」

「兄ならやりかねないわ」

「なんだと! お前こそモースとかいう奴のスパイなんじゃねぇのか!?」

「はーいストップ」と、ミツキが白い杖を二人の間に振り下ろした。

「黒幕が髭だろうとブタまんだろうと、神託の盾はイオンの邪魔をするつもりだってことだ。イオンを守ってバチカルに届けるのがルー君の役目であり、そのルー君をお屋敷に返すのがティアの役目。信憑性も分からない情報で仲間割れするより、仲良くしような、いい子だから」

 と、ティアとルークの頭をナデナデする。ティアは顔を赤らめて俯いた(かわゆいやつめ)。だがルークは「子供扱いすんじゃねーよ」といつもの如く怒った。

 イオンの体調も良くないので、一泊しようという話になった。
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