give&take
□あついひ
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「あぢー…」
「……あぢぃ」
「…あ」
パチンと右手で口を塞げば、ふごふごと文句を言われた。
――今日は昨日までの寒さから一変、40度近くあるのではと疑う程の真夏日和となり、さんさんと降り注ぐ太陽の光とうだるような暑さから、一時サニー号は海のど真ん中で停泊する事となった。
船内に居ればやって来た敵船に気づけないと追い出された船長と剣士の2人は、僅かに出来た日陰でグッタリと手足を広げていた。
「………ルフィ」
「…ふぁんふぁ?」
くぐもった返答からそういや口を塞いでたんだと気づき、離す。
どうにも頭がボーっとしてすっきりしない。それもこれもこの暑さのせいだと眉をしかめる。
「…なんだ?ゾロ…」
今度こそはっきりと発音された声に何を言おうとしていたのか一瞬考える。
「……あつい、を連呼すんな…」
「…ん?」
「…今にも死にそうな声で暑いなんて連呼されたら…おれの気が滅入る…」
もあもあと揺れる視界から目を閉ざし、ひんやりとした床や壁に意識を向ける。
こめかみから汗がツツツと滑り落ちる冷たさだって今のゾロには気持ちが良かった。
「……………だったらよ、ゾロ…」
ちゃぷん、ちゃぷん…
揺れる波の音が心地良い眠りへと誘う。
「……だったら、腹巻き脱げ、ゾロ」
おれは見てるだけで暑苦しいぞ、と正論を言ったルフィが力の無い手で腹巻きをぎゅうぎゅうと引っ張った。