※前拍手からの連載となっています。
「……おまえ、本当に頼むから出てってくれ!」
冷静になろうと精一杯抑えたはずだったが、抑えきれずに語尾が跳ね上がった。
その言葉をかけられた張本人はきょとんとした様子で首を傾げている。
ああ、何でおれはこんな奴を家に入れてしまったんだ。
数分前の自分を恨めしく思いながら座り込んで動こうとしないルフィの首根っこを掴み、玄関へと引きずり出す。
「……取りあえず、お前の荷物は後でお前の部屋の前に置いとくから。」
思ったように軽い体をずずずと引きずり、玄関までやって来た時に何を思ったかルフィは横に積み重ねられていたダンボールの一つに手をかけた。
それに気づかずに引っ張り続けるおれの前に降りかかる黒い影。
ドシャドシャガターン!
不安定に積み重ねられたダンボールは呆気なくおれ達に降り注がれた。
「…………………びっくしたなぁー!」
「…………なにが“びっくりした”だよ。この、アホっ!!」
力任せにガツンと拳骨を喰らわせ、今度こそ外へ引っ張り出そうと首根っこを捕まえるも相手が暴れるもんだから全く意味を持たない。
バンバン!と何度もルフィの手やら足が壁や扉を鳴らした所で、我慢ならない様子の隣人が再び現れた。
「うっせーぞ!!ガキ共がっ!!」
ああ、どうすんだ。
額に汗が流れたのはルフィとの格闘のせいか。それともこのおっさんの鬼気迫る迫力のせいか。
ぎゅるるるるる〜
その時流れた腹の虫の出どころは、はたまたおっさんで。
「………わりぃ。なんも食ってなくて腹空いてたんだ…。」
「そうなのか?んじゃ、食ってけよ。うちに食料いっぱいあるんだ。」
「お!!本当か?いいのか?…ま、じゃ遠慮なく。」
おれの腕の中で捕まっていたはずのルフィがスルリと抜け出して先導してゆく。
それに隣人のおっさんが続いて入って行ったのは、言うまでもなくおれの部屋だった。