長い商品


□朝
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朝目を覚ますと、いつもと同じ景色が目の前に広がってきた。
そこまで広くは無い室内。
その中に、自分と同じような仕事をしている仲間達が雑魚寝状態といっても良いような状態で寝ている。
一応掃除はされているけど、そこまで綺麗とは言い切れない棚や壁、窓。
それらをなんとなく眺めながらゆっくりと体を起こす。
昨日出来た背中の傷をできる限り庇うような感じで、ゆっくりとゆっくりと体を起して時計を見るとまだ起床の時間では無かった。
だけど、昨日夜ご飯も食べないで早めに寝たからかお腹は空いているしもう眠くないから、皆を起こさないように布団から抜け出るとゆっくり部屋から出ていく。

まだ誰も起きてきていないのか、廊下は誰もいなくてとても静かだった。
食堂では朝ご飯を作っているのかいい匂いが漂ってくるけど、厨房は僕たちは立ち入り禁止だから時間になるまで近寄る事は出来ない。
お腹が空いたことを改めて実感しつつ、特にやることもないからお風呂に行って昨日塗ってもらった薬を一応洗い流すことにした。

脱衣所に行くと、こんな朝早くから僕以外にもお風呂に入りたい人がいたのかお湯がはじくような音が浴室から聞こえてきた。
お店の中を知らない人は、僕たちは親とかに売られて可哀相だってすぐ言うけど、お店の中の人たちはちゃんと仕事をすれば優しいし、ご飯だってしっかりしたものをくれる。
お風呂だって、狭いお風呂とかだと病気とかが発生しちゃうからって一気に10人以上は入れるような大きなお風呂だし、仕事が無ければずっと居ても良いかなって思えちゃうくらい。

・・・こんな風に考えられるようになったのも、少しは大人になったっていうことなのかな・・・。
苦笑いを浮かべながら脱衣所に行き、羽織るだけの役目だった襦袢を脱いで脱衣籠に入れタオル片手に浴室に入る。

「おはよう。早起きだね」

浴室に入っても相手は気付いていないのか体を洗い続けている。
無言でいるっていうのも、なんか気まずいから自分から声をかけると今まで俯いていた子がはっと顔を上げる。

「あ、ごめん。驚かせちゃった・・・?」
「・・いえ、こちらこそすみません・・・こんな朝早くお風呂で人に会うって言う事が無かったのでつい・・」

さりげなく相手の隣に腰をおろして、鏡の前にあったボディーソープやシャンプーを自分の方に引っ張りよせてゆっくりとお湯を背中にかける。
まだ完璧に傷は塞がっていないのか、所々お湯が当たるとピリピリと痛いけど相手に気を使わせちゃうかもしれないと思ったから唇を噛み締めて堪える。
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