Hiyori
□倭国で一番皇子様
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そんな太子を見て、(・・・本当は誘ってくれて嬉しいだなんて、絶対言えないな・・・)と一瞬考える妹子。
「ほら、早くいきますよ!太子!」
「おう!じゃぁ場所はフィッシュ竹中さんのいる池のある森にするでおまっ!」
「わかりました、じゃあ竹中さんの分のおにぎりも作りましょうか。」
「もちろんだ!」
そう言って笑いあう二人、とても幸せそうな、二人だけの空間。
でも妹子は知っている、こんなの長く続かない、こんなのは儚い夢と一緒、このあとはいつも・・・
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出発直前に太子が部屋に水筒をわすれたので一緒に取りに来て欲しいと妹子に言った。
何やってんですか、と言いつつも付いてきてくれる妹子。
二人が向かおうとしたその時、
「太子ー、やっと見つけましたよ!」
息を切らせながら二人に近づいてくる朝廷の役人。
「なんだよー、何か用か、冠位12位」
その人の名前を呼ばないで位で呼ぶ太子。
「そ、その呼び方やめてください・・・。それより今日は隋からの使者との面会の日ですよ!!こんな所で何やってんですか!そんな遠足に行くみたいな荷物もって・・・・!とにかく行きますよ!」
そう言いながら太子の腕を掴み引きずっていく冠位12位の人。
「妹子さんもすいませんでした、それじゃあコイツ連れていきますね。」
「妹子ー!妹子ー!助けろー!!」
初めのように妹子の名を連呼する太子。
妹子はただ呆然とするしかなくて。
だんだん妹子を呼ぶ声も小さくなって遂には聞こえなくなった。
でも路地を曲がる最後に見た。
微かに太子が唇を変形させ笑っていた。
・・・・確信犯
あの人はこうなることが分かってた。
そして僕も・・・
(今日の予定くらい確認しろよな・・・!馬鹿太子。まったく、この荷物どうすんだよ、また僕が片付けんか・・・・なんで・・・)
(・・・なんで、貴方はいつも僕をおいていくの?)
(中途半端なんて嫌だ、誘ってその気にさせてそのまま逃げないで・・・・!・・・早く、・・・早く僕を貴方のものにして・・・太子・・・!)
倭国で一番皇子様
(わかってるんでしょう?)
(僕の・・・気持ち)
(焦らさないで、惚けないで、早く貴方を僕に下さい)
END