その他

□君と一緒に
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「ねーねードタチン、何で俺がいるのに本なんか読んでるの?」

「…読み途中だからだろうが。つーかドタチン言うな」

「ぶー」


本を読む門田の後ろから、のしかかって話しているのは折原臨也。

池袋のとあるマンションで、ひとり仕事を終えた門田が、依頼主から用意された部屋で本を読み始めたのがつい10分前。
門田がいる場所も時間も調べ済みな臨也が、仕事帰りにマンションを尋ねてきたのが5分前。

爽やかな笑顔で「今日泊めてv」と入ってきた臨也に、門田の眉間には数本のシワが寄ったが、さっさと室内に入りソファーでくつろぎ出した臨也を追い出す方法など知るはずもなく…放っておくことを決めた門田は、ソファーの横にあるベッドに腰掛け、読書の続きを始めた。

のだが…


「ねぇドタチン…この状況はとてもおかしいよね。俺とひとつ屋根の下にいるってのに、小説とにらめっこってどういうこと?俺と小説どっちが大事なのさ!!」

「いろいろおかしいだろそれ!!つか、変な言い方するなよ気持ち悪い」

「失礼だなー。俺はこんなにもドタチンのことが大好きなのに…どうしてわかってくれないの!?」

「はいはいそうだな黙ってろ」

「酷っ!!それに返しがテキトーだ!!」


いつの間にか自分の後ろに来ていた臨也に少し驚きながらも、門田は適当にあしらう。

誰であろうと、無駄にテンションの高い臨也と会話をするときはかなりの(精神的)労力を消費するため、まともに答えているとすぐに限界がくる。
ほとんどの場合は、ここで臨也が一人ベラベラと意味のないことを喋り続けるのだが、今の臨也はただ門田に寄り掛かりぶつぶつと独り言を言うだけで、話しかけてくることはなかった。


背中の重みが、門田の口を開かせる。


「…そもそもお前、何しに来たんだよ」

「いやね、久々にドタチンと一緒にお泊りしたいなー、と思って」

「…は?お泊り??」


クエスチョンマークを大量に出しながら、門田は首だけを後ろへ向ける。
すると、振り向いた門田の左頬に臨也の唇が軽く触れ、そっと耳元で囁かれる。


「…ていうか、ドタチンと一緒にいたかっただけなんだけど」

「…………お前なぁ…」


赤くなった顔を隠すように、口元へ手を当てる門田を見て、臨也は満面の笑みを浮かべる。
いたずらが成功したときの子供のような笑顔で、今度は門田の膝の上に座り始めた。
それはよく子供が絵本を読んでもらうときの位置であり、大の大人が座ると文章どころか本すら見えない。


「…………おい、臨也」

「何?ドタチン」

「邪魔だ」

「え?このまま抱きしめたいって?どうぞどうぞ」

「じゃ・ま・だ!!」


臨也を退けようとする門田だが、その腕は前でガッチリと掴まれており、身動きがとれない。

「落ち着いてよドタチン、もし見えないなら俺が音読してあげるから…」

「いらねーっ!!」


後ろから抱きしめる形のまま、門田は臨也と押し問答を繰り返す。
勢い余ってそのまま二人して後方へ倒れ込むと、臨也は門田を見上げ、少し照れたように笑った。


「……やっぱり、ドタチンの腕の中は落ち着くね」

「………言ってろ…」


臨也の顔に被せられた、大きな手から覗くのは、耳まで真っ赤な門田の顔。

いつもよりこころなしか熱い手の中で、臨也は静かに目を閉じる。











こうして触れ合うだけでいい


ただ、一緒にいたいと思う


どんなに好き勝手に喋っても


君なら答えてくれるって


ずっと、そう、信じてるから




END...

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