宝物

□キャンディラッシュ
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「はい、アルト」


そう言って渡されたのは青いリボンでラッピングされた赤い小袋。
中には何か入っているらしい。


「何?」


何か礼をされるようなことをした覚えは無く(俺の中では)、取り敢えず聞き返してみた。
ミシェルを見ると、いつものことながら見るからに呆れている。
…悪かったな鈍くて。


「アルト、今日は何月何日?」

「…3月、14日」


忘れかけていた記憶を手繰り寄せ日にちを思い出したが、今日が何の日なのかまったく心当たりがない。
そんな俺を見て、更に呆れている様子。
しかし、ミシェルにはそれも想定内だったらしく、初めから忍ばせていたのだろう市販のチョコを取り出した。


「これを見ても思い出さない?」

「…あ、……ホワイトデー…?」


確か、バレンタインにチョコをやったような記憶が…。


「正解♪」

「…男がウインクしてもキモいだけだ」


ウインクして答えるミシェルを横に流しながらボソッと呟いた。
…だって、ホントのことだろ?


「人がせっかくお返ししてやったのに礼の一言も無しか?お姫様」


突然、ミシェル近付いて来て二人の距離を縮める。
俺より少し身長が高いため、軽く見上げれば微笑むミシェルの顔。
自然な流れのように腰に回ってきた手はいつものことだからもう慣れた……多分。
心臓がバクバクいってるのは気のせいだ。
そうしているうちに、俺の頬にもう片方の手が掛けられ、撫でられて。
その手がとても優しくて。

「……サンキュー、ミシェル」


おそらくここはミシェルが喜ぶところなのだろうが、何故か俺の方も嬉しくなってしまった。


「何、アルト?素直にお礼なんて言っちゃって。てか顔赤いし」

「れ、礼がどうのこうのって行ったのはお前だろ!!」




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