宝物
□俺に降るのはキスの雨
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そう、今日もいつもと変わらず何事もなく、平凡な日を送る筈だった。
普通に登校して、普通に授業を受けて、友達と話したりして、普通に下校する。今日もそんな日になる筈だったんだ、アイツが変なことをして来なければ…。
「アールートッ♪」
いきなり背後から背中を軽く叩かれた。
教室の窓際にある俺の席は空を眺めるのに良い席だったが、同時に眠気を誘う場所でもあった。
そのせいか、授業中や休み時間に寝てしまうこともしばしば。
「ん……ぅ?」
「おはよ、もうそろそろ授業始まるぞ」
「んー…、おはよ」
いつもと同じふうに交わされる軽い挨拶。
時計を見れば授業まであと数分もない。
仕方なく机にへばり付いていた身体を起こし、頭の中にある眠気を飛ばそうとした。が、眠気というものはそう簡単に飛ぶものではない。
…瞼が重い。
「アルト?大丈夫か?」
「ああ、少し眠いだけだ」
俺の顔を覗くように見たミシェルに、俺はフッと笑ってみせた。
それから、俺の眠気を誘うようなつまらない内容の授業が午後まで続いた。
授業合間の休み時間などには再び眠りそうな俺に、ミシェルが隙をみてキスを迫ってきたり…
頭良いくせに空気読めねぇのかよコイツは。
「何バカなこと言ってんだよ、ここをどこだと思ってやがる…!」
「んー、学校」
当たり前だが、サラリと応えやがる…。
「何?ここじゃなきゃ良いの?」
「……え、あ、まぁ…」
この時俺がちゃんとした応えを、返事をしていれば!!
あんなことには…
今日最後の授業は幸いにも航宙科の授業だった。
空でも飛んで眠気を飛ばそう。
いくら仮初めの空でも何もしないよりはマシだろう。
「アルトー、そろそろ行くぞー」
「おぉ…」
ミシェルの呼び掛けに気の抜けた返事をすると、ノロノロと教室を後にした。
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