MF

□冷たい言葉と態度の矛盾
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オレンジ色が綺麗な放課後、俺とアルトは喧嘩をした。喧嘩と言っても俺が先輩(もちろん女性)に呼び止められ、待ち合わせに遅れたのが原因だ。ごめんね、と謝れば、俺には関係ないなんてそっぽを向くアルト。そんなアルトが可愛くて、今夜彼女と食事に行く約束(もちろん嘘)をしてきたのだと言ったら…殴られた。



「…お前なんか大っ嫌いだ!」


長い髪を振り乱し走り去る姿を見ながら、さてどうしたものかと考える。余計なことを言った自分が悪いのだが―



「大っ嫌い、ね…」



俺は赤くなった頬をさすりながら一人、微笑んだ。












やがて日も暮れ、レストラン街ではあちらこちらでディナーへと向かう男女の姿が増える。そんな通りの入り口で、何やらこそこそしているお姫様が…。俺は後ろからそっと近づきポンッと肩を叩く。するとアルトは面白いほど体をビクッとさせ、もの凄い勢いで振り向いた。


「おわっ!!ミ、シェル…お前、先輩と、その…食事に行くんじゃなかったのかよ」

「うん、今から行くところ。レストランの入り口で待ち合わせしてるからさ」

何事もないようにさらりと答えれば、アルトの眉間にシワが寄った。すぐ顔に出る姫が可愛くて、つい笑ってしまう。


「何笑ってんだよ!!」

「いや…何でもないよ。ところで姫はこんなとこで何してたの?散歩?それとも、誰かと食事の予定でも?」


どれも違うと知っているし、俺のことが気になって来たのだということもわかっている。それでも俺は意地悪く、アルトに聞いた。誰が見てもわかるくらい不機嫌になったアルトは、少しの間考え(食事の予定なら誰とにするかとか考えたかな)結局、一番ボロが出なさそうな答えを返した。


「俺は、散歩してて…ちょっと休んでただけだ。お前みたいなタラシと一緒にするな!!」

「はいはい、そうだね。俺と違ってアルトは一途だもんな」


アルトの目が見開かれ、手に拳が強く握られる。しかしさっき殴ったところが赤く染まっているのが見えたらしく、二度目のパンチは来なかった。代わりに体中の力が抜け俯くアルト。心なしか肩が震えている。少し虐め過ぎたかなと思いつつも、俺の言葉はまだ紡がれる。



「ま、あれだ。アルトは俺なんかに興味ないんだもんな」


震えていたアルトの肩がピタリと止まる。


「俺が誰といようが何をしてようが、アルトには関係ないんだし」


緩んでいた拳が強く握られる。


「俺のこと…大っ嫌い、なんだよな」

「っ…!!」


アルトが、勢いよく顔を上げ俺の服をつかみ引き寄せた。怒りと悲しみとでぐちゃぐちゃになった顔。その目には溢れんばかりの涙が溜まっていて、俺を見つめる。言いたい言葉が出てこないのか、口をパクパクさせるアルトが可愛くて…そう、どうしようもなく、可愛くて。



「全部自分で言った言葉なのに…酷い顔だぞ?」

「…だって…ちが…っ…誰のせいだと…!!」


やっと言葉を紡ぎ出した唇を、俺は塞いだ。触れるだけの軽いキス。チュッというリップ音とともに離し、優しくアルトを抱きしめた。


「落ち着いた?」

「…ずるい…」


アルトは黙って俺の胸に顔を埋め、ギュッとしがみついた。


本当はもっと言いたいことがあっただろう。どうして恋人である自分にわざわざ女性との食事の約束のことを言うんだとか、本当に嫌いじゃないことくらいわかるだろとか…何で自分だけが、こんなに苦しまなきゃいけないだ…とか。俺は全部知ってて、わかっててやった。


全ては―




「ごめんね…アルト




















愛してるよ」




君への、愛故に。



END...

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