企画部屋

□2011エイプリルフール
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夜勤明けで思い立ち2時間で作成したため内容が妙です。
読んでくださった皆様ありがとうございました。
30件超のたくさんのコメントをいただき、全てが楽しんで下さったという内容で管理人感謝感激です。


ここから続きました


「溝山さん!いくら何でも酷すぎじゃないですか…!俺はもう無理です!」

突如、叫んだのは篠宮だった。
溝山が虚を突かれたという表情を声の主に向ける。
川田さえ呆気に取られ、溝山のモノを愛撫する手を止め篠宮を振り返った。

篠宮は怒りにだろう、普段は白い頬を赤く染め、鋭い視線で溝山を見据えている。
その今までにない篠宮の激昂ぶりに、溝山の口許が自然笑みの形に歪む。

面白い。とうとう主人に牙を剥くか。

「んだよ篠宮あ?とんだ言い草だなあ。」

「当たり前です。修吾くんにこれ以上暴行は加えさせません。」

笑顔に殺気を滲ませた溝山に臆しもせず、篠宮はズカズカと溝山と川田に歩み寄りロープを潜った。
あまりの事態に固まってしまっている川田を、溝山から剥ぎ取るように腕の中に抱く。
川田は「えっあっ」と意味の無い言葉を発するのだけで精一杯な様子だ。

「修吾くん、もうこんな無茶はしなくていいんだ。ごめんな、俺のせいで…っ」

篠宮が川田の唾液に濡れた口許を拭い、酷く苦しげに表情を歪める。
今にも泣き出すのではないかというその苦悩に満ちた顔。
川田は咄嗟に否定しようとしたが、しかし背後にいるであろう溝山の事を考えると何も言葉が出てこない。
ただされるがままに抱きしめられ、思考だけがひたすら右往左往する。

「てめえ、そんなモノを大事にしてどうすんだ?何の取り柄も無いただのガキだぜ?」

「それ以上言わないでください。修吾くんはただのガキじゃない…っ」

溝山が放つ辛辣な言葉に、篠宮が語気を荒げる。
そして堪えるように一瞬だけ川田の首筋に顔を埋め、再度溝山を真っ直ぐに睨み付けた。
川田を抱く腕に一層力が篭る。

「修吾くんは俺の唯一愛する大事な人だ。これ以上あなたに手も口も出させない…!」

きっぱりと言い放った台詞が、狭い部室内に凛と響いた。
川田が目を見開き、間近にある篠宮の横顔を信じられないといった目で凝視する。

「あっあの、篠宮さんっあのっあんな恋人だなんて嘘は…っ」

「言わないでくれ。今はまだ母さん達をはぐらかす嘘かもしれない、でも俺は、修吾…っ」

篠宮が川田の肩を掴み身を離す。
真っ直ぐに合わさった視線。篠宮が川田にしか見せない真剣な眼差しのまま言葉を繋げた。

「俺は本気でお前と恋人同士になりたいんだ。俺じゃ駄目か…?」

その表情に、嘘偽りを見出だせという方が無理だった。

鬼気迫る真剣な表情。川田にも流石に篠宮が本気であることが伝わり、それ以上弁明させる事を許さない。
川田の顔が俄かに真っ赤に染まる。

「えっ俺、だっ男で…っ」

「最高に面白い見世物だな篠宮あ。お前が俺を笑わせるなんて芸当出来るとは思わなかったぜ。」

溝山が瞳をギラつかせ低く笑う。
次の瞬間には篠宮が川田ごとマットに身を倒した。
今まで二人が視線を合わせていた空間を、物凄い勢いをもった何かが横切る。
いつの間にか立ち上がった溝山が、横蹴りを放ったのだ。

「だがてめえがどんだけ愛を語ろうがそりゃあ俺のモンだぜ。くれてやる気はねえんだよ、とっとと離せ。」

「冗談じゃないですよ、溝山さん。修吾にはもう好き勝手させない。」

直ぐさま身を起こした篠宮が、溝山に応戦するべく向き合う。
川田はもう今までに無い程に顔を青くして二人を見上げた。
何が起きているのか理解しようにも、思考が追いつかない。
ただ修羅場であることは理解出来た。
二人とは短い付き合いだ。だが、篠宮がここまで溝山に牙を向いている姿など見た事が無い。
二人は傲慢な上司とそれに苦労している部下という形ながら、川田からすれば相当深い付き合いのように見えていた。
それが、こんな、自分のせいで───!

「溝山さん篠宮さんっ落ち着いてください!俺が全部悪いんです!俺が───!」

「本当だなぁ修吾。お前はただのお荷物じゃなくとんだ疫病神だったみてえだな、うちの腹心をこんなたった2ヶ月程度で誑し込んじまったんだからよ。男に突っ込まれていらねえ色気でも出ちまったんじゃねえか?」

「違う修吾、俺がお前に一方的に惚れ込んだだけだ。お前は何も悪くない。だから───俺がケジメをつける。」

川田にを罵倒する溝山に、篠宮が空かさず口を挟み反論する。
溝山はもう笑っていなかった。
ただそこには、相手を駆逐しようとする猛獣が牙を剥き出しにしているだけだ。
怒りすら感じさせる醒めきった瞳が、それ以上川田に口を挟む事を許さない。

二人の一触即発の張り詰めた空気に、川田の脳内ではひたすら同じ言葉が駆け巡る。

俺のせいで俺のせいで俺のせいで

リングで人死にが出る!

「てめえの手足をぶち抜いてからこいつを目茶苦茶に犯ってやるよ。非力なくせに上に盾突いた己の浅はかさを呪うんだな。」

溝山がジャケットの懐に手を入れ引き抜く。
その手には黒光りする銃が握られていた。


 
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