素晴らしき戴きもの

□※泥の中にも花/溝山×川田
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「想いの果て」第1部終了お疲れ様でした!

ということで、第1部終了お祝いとして。

男らしくて時に鬼畜で素敵(笑)な溝山さんの魅力の片鱗が
僅かなりとも表現できていれば嬉しいです。







『泥の中にも花』



「あ、おかえりなさい」

 事務所に戻った溝山達を満面の笑みで男を出迎えたのは、学生服姿の川田だった。

「おう。いい子にしてたかぁ?」
「はいっ! お疲れ様でした! 俺、コーヒー、入れますね!」

 溝山達がいない間、宿題でもしていたのだろうか。川田はローテーブルの上に出しっぱなしだった学用品を慌てて重ねると、事務所内の簡易キッチンへと立った。川田にとっては、しばらく通ううちに勝手知った場所になりつつあるようだ。

 ソファにどっかりと腰を下ろすと、溝山は煙草に火をつけ紫煙を吐き出した。酔いの混じった心地よい疲労がゆっくりと溝山の全身を支配する。

「溝山さん、俺はお先に」
「ああ」
「は……え? 篠宮さん、もう、帰るんですか? 折角、今、コーヒー……」

 慌てたように川田が顔を出す。篠宮は苦笑して上司を見た。さっさと帰れオーラが明らかに浮かんでいる。それに気付かないのは目の前の川田くらいなものだろう。

「家でまだやることが残ってるからね。コーヒーは今度ゆっくりもらうよ? じゃあ、お疲れ様でした」

「あ、はい。篠宮さん、お疲れ様でした……」
「おう」

 紫煙を燻らせながら、溝山はさっさと篠宮のことを脳裏から追い出した。






「修吾」
「は、はい」

 慌てたようにカップを二つ持って川田がソファへと戻ってくる。

「溝山さん、どうぞ」

 パラパラと川田の参考書をめくっていた溝山の前に川田は湯気の立つカップをおいた。もう一つは僅かに逡巡してテーブルの向こうに置こうとした川田に、溝山は薄く笑った。

「そっちじゃねぇだろ? いいから横に来い」
「は、はい」

 いつまで経っても馴れない初心(うぶ)な様子の川田に、それが「川田」なのだと呆れつつも納得し。

「受験勉強は進んでんのか? いない間にゲームとかしてんじゃねーだろうな?」
「あ、はは……まあ、ぼちぼち?」

 笑ってごまかす川田に溝山は煙をゆっくりと吹きかけた。顔に浴びせ掛けられた煙に川田が煙そうに目をしかめる。

「そんなこったろうとは思ったけどな……おい、大丈夫か、受験生?」
「あ、でも! ちゃんとこの前のテストの成績、上がったし! ちょびっとだけど! その……っ!」

 必死で言い訳をする川田に思わず笑みがこぼれる。
 本当に、こいつときたら、いいことだけしか覚えていない。策士なのか、天然なのか……後者なんだろうなぁ。

「俺が教えたんだ、当たり前だろうが」

「は、はい! ありがとうございます! ホント、感謝してます!」
「そうか?」

 条件反射的に大きく頷く川田に、ホントかね、と苦笑を浮かべ。
 溝山はスーツの内ポケットから小さな袋を取り出した。
 今日廻った知り合いの店から、新作のサンプルだと渡されたものだった。ちょうどいい。

「だったら、頑張ってる川田君にはプレゼントをやらねぇと、いけないな」
「へ?」

 ほら、と溝山は紙袋を無造作に川田に放り投げた。危なげなく受け取ると困惑したように川田が笑う。

「あ……その、ありがとうございます」
「開けないのか?」
「はいっ! すげー嬉しいです。溝山さん、ありがとうござい……っ!」

 袋をあけ半分取り出しかけたところで川田が硬直した。
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