シリーズ

□19
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「彰宏、やっぱお前料理上手いな。マジ最高に美味い。で、明日は肉じゃががいい。」

「ありがとうございます。肉じゃがですか。分かりました、じゃあ今日作っとくかな……」

「材料あるのか?」

「んーどうだろうな、とりあえず母さんにラインで聞いてみて……多分無いから帰り買って帰ります」

昼休み。俺が作った弁当を食べている寺門からのリクエストが入る。
朝冷蔵庫すっからかんだったし、まあ買っても余るような食材じゃないから母さんに聞くまでもないか、と一人で結論付ける。
俺が答えると、寺門は「そうかそうか」と神妙そうに頷いた。
一体何なんだ。
リクエストを貰えるのは助かるが、いやつか聞いた覚えは全くないんだが、褒めながら言われると正直嬉しいし、つい頷いてしまう。
しっかし、あんたがそんな反応をすると何か嫌な予感しかしないんだが……

若干身構えた俺相手に、寺門は少し間を置いた後、こう続けた。

「よし、今日の買い出し俺も行く。今日は邪魔物もいねえしな」








「隣の悪魔19」






「本気で買い出し行くんですか……?」

社会科の山下先生に頼まれた資料運びの手伝いを終えた俺は、下足箱前で待ち伏せしていた寺門に恐る恐る尋ねた。
てか本気で待ってたのか、30分くらいだけど……
圭人はとっとと下校してしまっている。居なくて良かったと思う、顔を合わせるるたびに険悪ムードになる二人が鉢合わせしないだけでも、大分楽だ。
仲良いなと思わせられることも多いんだが。

「当たり前だろ。いつも作ってもらってばっかじゃ悪いからな、今日は俺を荷物持ちだと思って好きなだけ買えよ、勿論金も出すからな」

「えっ」

自信満々に言う寺門に驚いてしまう。そんな殊勝な気持ちがあったのか、あんたに

「いやいいですよ、じゃあ駅前の商店街で買い出ししちゃいましょうか、そんで俺持って帰りますから」

「は?」

「はい?」

やばい、めんどくさいという気持ちがばれてしまったのだろうか、寺門が不機嫌そうに眉間にしわを寄せる。

「お前いっつもそこで買い物してんのか?」

「いや、普段は自分の家の近くのスーパーですけど」

「じゃあそこにしようぜ」

「え?」

「お前の家までちゃんと荷物持つからな、お前のいつも行くとこで買い物すんぞ」

やけにイイ笑顔で言い放った寺門は、俺の答えも聞かず歩きだした。
後ろを歩き続け、電車に乗り、一緒に最寄り駅で降りる。
てか何でこの人俺の降りる駅知ってんだ……?







「お邪魔しまーす!」

「ど、どーぞ……」

結局断れないまま、玄関を開け放った寺門に続き家に入った。
うう、どうしよう寺門連れてきちゃった……
はっつか俺、誰か家に連れてきたの久々じゃないか

「え、え!?あらあらいらっしゃい!え!?あっくんお友達!?」

リビングから母さんが飛び出してきた。
とんでもなく驚いた顔をして、俺と寺門を見比べている。
げえ!そうだ母さん今日パート休みの日だ!
と、とにかく紹介しねえと

「あ、あのー、こちら、学校の」

「初めましてお母さん、俺寺門由利と申します。彰宏くんにはいつもお世話になってます」

俺の言葉を遮り、寺門が母さんの手をがしっと握り挨拶をした。
母さんが更に空いた手で寺門の手を握り返し、目を見開いたまま挨拶を返す。

「まあまあ!こちらこそ彰宏がお世話になってまして……!あの、お友達ですか!?」

「はい、彰宏くんとは一番仲良しなんです」

「そうなんですかー!まあまあまあまあ!ささ、どうぞどうぞ!何もないですけどお上がりになって!あら!この買い物袋は!?」

「すみません、お邪魔します。あ、これ今一緒に買ってきた明日の弁当の材料なんです。彰宏くんにはいつも弁当作ってもらって……いつも凄く美味しくて、俺、彰宏くんの弁当大好きなんです!彰宏くんがこんなに料理上手なの、きっとお母さんの影響なんでしょうね」

「まーっあっくんがいつもお弁当渡してたの、由利くんだったの!そんな、私なんて大したことないのよー!これ、冷蔵庫に入れておくからね。ほらあっくん!由利くんにリビングでお飲み物出して!」

「え!?リビングに!?」

「あっくんお部屋片してないでしょ!いいからほら、リビングに!」

「ははは、すみません、お構いなく」

何だか興奮したままの母さんが、寺門をリビングに引きずっていってしまった。
慌てて後を追う。
つかなんだこれ何でリビング!?
友達って、いや友達じゃねえけど仮に友達だとして、普通リビングじゃなくて俺の部屋なんじゃねえの?

「ごめんなさいね散らかってて、由利くん今日は時間あるの?」

「いやめっちゃ綺麗ですよ!時間はあり余ってます」

「あら、じゃあゆっくりしていってね、お夕飯もよければどう?」


 
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