シリーズ

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見慣れたピンク頭の美形と視線がかち合う。

「あーアッキーお前俺のこと置いてくなよなー、荷物重かったじゃんかー」

勿論こんな奇抜な頭は他にはいない。
圭人が俺を見るなり不機嫌オーラ全開でズカズカと直進してきた。

「お前いなかっただろ」

「探せよこの馬鹿」

ゴン。反論した途端に頭をどつかれる。い、痛い

「けけ、ケートくんこんにちは、今日からよろしく」

「アッキー邪魔あ、デカイ図体してんだからよけろよ」

「けっけぇくん……!」

果敢に話し掛けたヒリュウくんを無視し、圭人は俺を無理矢理に押し退け窓側の席に座ってしまった。
な、何してんだよ圭人!ちゃんと挨拶しろよ!

「けぇくん、こちら、窓側からレージくん、ヒリュウくん、エータくんで……」

「あっそ。アッキー俺の水」

「はい、で、いつも体育倉庫で一緒になる人達で……」

「知らねえよ、おい、お菓子」

「はいはい」

どうしよう、取り付くしまもない。
三人も黙ってしまい、俺は最悪の初対面に冷や汗をかくしかない。
何で圭人っていつもこうなんだ……
悪魔には場の空気を読むとか関係ないにしても、お前あんまりだろ

「ひ、ヒリュウくんごめんね、圭人っていつもこんな感じだから気にしな」

「お前けぇくんだっつってんだろが」

「け、けえくん悪気はないんだ、ごめんね」

圭人に妨害されつつ謝るが、三人は微妙な苦笑いをするだけだった。
そりゃそうだ。俺がこんな対応されたら泣くわ

「あーダリぃ、あっきいなんか面白いことやれよ」

「えっと……素数の言い合いするか?」

「は?しね」

「あーうん……」

口を開けば悪態しかつかない圭人を宥めるだけで精一杯で、当然エータくん達とは会話も出来ない。
この間別荘に連れて行って貰った時の悪夢の再来に、俺は心中で頭を抱えた。
俺多分、他の生徒と親睦なんか深められないこれ……







「じゃあ各自荷物部屋に運んで、11時には玄関前に集合なー。遅れないように!」

三組担任杉山先生が合宿の注意点を説明したあと、5組担任小川先生が号令を発し、それぞれ荷物を担いで立ち上がる。

「はいあっきい、俺の荷物も運んどいて」

圭人はさも当然と俺に荷物を押し付けると、クラスの女子と合流し行ってしまった。
何でお前はそんな目茶苦茶なのに女子とコミュニケーションが取れるんだ。

山の麓の合宿所は、夏場だというのに少し涼しいくらいだ。

雄大な山々に、美しく力強い緑の木々。環境は申し分なく、俺はせっかくだし嫌な気分にならないように、綺麗に澄んだ空気を深く吸い込んだ。

ハアアー……

やべえ、これじゃ深呼吸じゃなくただの溜め息だ……

「彰宏くん無事でしたか!」

呼ばれ振り向くと、これまた見慣れた金と黒のツーブロック。

「あ、小田原くん。あっちのバスだったんだ」

小田原くんが駆け寄ってきてくれた。わりかし俺と話してて仲は悪くない筈なのに、とうとう二学期になっても小田原くんは敬語のままだ。
つか、もしかして俺だけなのかな、小田原くんと仲良い方だと思ってんの……
か、悲しくなってきた

「彰宏くん、一号車大丈夫でしたか?あっち殆ど5組の連中ですよね」

「え、うん。エータくん達が乗ってたから話ししたよ」

圭人のせいで最初だけになっちゃったけど、とは言わない。
小田原くんは微妙そうな顔をして、俺に更に寄ってきた。

「エータ達ですか?失礼なことされませんでしたか?」

「いや……寧ろ圭人のが失礼だったっつうか……」

小田原くんの妙な言葉に俺が気まずくて濁して答えると、小田原くんは逆にスッキリしたような表情になった。

「あ、そっち長浜さん一緒だったんですもんね、じゃあ大丈夫ですね。もう行きましょうよ」

「あっいいよ小田原くん、それ圭人のバックだから俺持つよ」

圭人が投げ捨てていったバックを担いで急かす小田原くんの後を慌てて追う。
圭人がいたからまずかったんだけどな……

部屋割はエータくん達とは別だった。両サイドに三段ベッドが置かれた六人部屋は、3組の男子だけで構成されている。

「ヤッホー彰宏くん小田原くんっよろしくー!」

「俺ゲーム持ってきたよー」

「彰宏くんっまだ時間あるし対戦しない?」

「吉岡くん近藤くん隅谷くん、よろしく」

「ども」

口々に挨拶を交わし、俺はちょっとだけ浮かれてきていた。
吉岡くん近藤くん隅谷くんとは、最近ちょくちょくゲームしたり情報交換したりする仲だ。
今日はみんな一緒の部屋だからって、モンスター育成ゲーム「モンクエ」で通信して遊ぼうと約束していた。

「小田原くんゲームする?」

「俺はよく分からないんで見てます」

「じゃあ俺の使ってみないか、一応ある程度強くは育ててあるから」

荷物をテキトウにベッドに放り投げ、俺達はゲームを片手に部屋の中央に集まった。


 
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