シリーズ

□21
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「じゃああっくん、かずくん、明日から二日間よろしくね。何かあったら、か、な、ら、ず!お母さんかお父さんに連絡寄越すんだよ?」

「うん大丈夫、しっかり留守番しとくよ」

「彰宏、和浩、お土産買ってくるからな!」

「おう!父さん達も仲良く楽しんでこいよ!」

「かずくん、あっくんの言うことちゃんと聞いてイイコにしてるのよ?」

「何だよー!俺だけガキンチョ扱いすんなよな!」

「ガキンチョでしょ!あ、あと、帰りにまなちゃんと一緒に帰ってくるから」

「じゃあ夕飯は帰りに食べてくるか?」

「んーそうしよっかな」

「じゃあ俺と和浩で明後日の夕飯までは食べとくから、気にしないでゆっくりしてきて」

「ありがとう!じゃあ行ってくるわね」

「よろしくなー、行ってきます!」

「行ってらっしゃい」

「行ってらー!」

2泊3日分の荷物を持って楽しそう出掛けていく父さんと母さんを玄関前まで見送って、鍵を掛ける。
さあて、洗濯物でも干そうかなと、俺は大きく背伸びをした。




「隣の悪魔21」



「親父達大丈夫かなー、親父かなり方向音痴だけど、カーナビ通りに進めるかね」

「母さんが一緒だから大丈夫だろ」

「母さんも怪しくね?普段はアキ兄がナビしてるようなもんじゃん」

「うーん、まあ久々の二人きりの旅行だし、きっと母さんが何とかするだろ」

和浩と並んで洗濯物を干しながら、両親の旅路の心配をする。
今日は金曜の夕方だ。ちょっと前に俺が提案した「俺ももう高校生だし、夫婦水入らずで旅行とかどうかな」を実行するべく出掛けていった二人の代わりに、俺と和浩が今日から三日間、この家の留守を預かる事になった。

まなみは以前から約束があった親戚の円ちゃんの家に、少し早めに泊まりに行っている。

「俺とアキ兄二人だけかー、ドキドキしちゃう」

洗濯物をパンパンと伸ばしながら、和浩が言う。
確かに両親が夜も不在なままというのは生まれて初めての経験で、自宅にいるというのに何だか冒険でも始まるような気分だ。

「だなぁ。俺ら二人きりで生活とか今まで無かったもんな」

「そうそ。……でさあアキ兄、圭人くんとか飛鳥さん、マジでいないんだよね?」

「清里さんのとこで、従兄弟の結婚式だからな。向こうも家族で出掛けてんの知ってるだろ」

そんなもの行きたくないめんどいとブーブー言いながらも引きずって行かれた圭人を思い出す。

あいつがいないと言うだけで、この留守番も随分難易度が下がっている気がした。

「お邪魔は無しってわけね」

「まあな。今日から男兄弟水入らずって感じか。さて晩飯用意するから、お前風呂入ってこいよ」

お?俺と二人きりで嬉しいなんて、可愛いじゃないか。
晩飯を用意しようとキッチンに向かいかけた俺のシャツの裾が引っ張られる。
和浩が上目遣いに俺を見て、シャツを掴んでいた。

「ん?」

「なあアキ兄、久々にさ、風呂一緒に入んない?普段だと母さんとかまなみにからかわれるだろ?せっかくだからさ……」

和浩の言葉にジーンとしてしまう。
和浩、まだ俺と風呂入りたかったのか、本当は……!

「いいぞ。飯って言っても、今日は母さんが作ってくれたのチンするだけだしな」

和浩の頭を撫でて答える。
和浩は嬉しそうに目を細めて笑った。



で、だ。簡単に言えば、和浩は決して俺に甘えたくて一緒に風呂に入りたかったわけじゃなかったってことだ。

「お前いい加減にしろこの馬鹿が……!触るんじゃねえ!」

「えー何で何で!いいじゃんアキ兄!ね、気持ち良くなろうよぉ」

「このクソ馬鹿野郎!放せ!」

「もーほらっね、アキ兄のセクシーな裸に俺もうビンビンなんだから」

「当てるなああああ!」

この馬鹿たれが!

体を洗い終わって一息ついた俺に、和浩がびったりと背中から張り付いている。
隙あらば胸やモノに手を這わせようとしてくるし、背中には何か硬いヤツが押し付けられてるし、もう最悪だ。
しかもこの風呂場というスペースでこいつを跳ね退けたら怪我をするかもしれないしで大した回避も出来ず、俺は和浩の手を掴み動きを押さえ、怒鳴って聞かせるしかない。
普段は俺に言われると一応退くくせに、今日はやけにしつこいというか、全く動じていない。

何なんだこいつは……!

「お前、調子にのるなよ?俺らは兄弟でしかも男同士なんだぞ?こんなふざけた事していい関係じゃないだろ。第一お前彼女はどうしたんだ……」

「だって俺アキ兄大好きなんだもんっ前に裸のアキ兄がいたらムラムラしちゃう、ダメ……?」

背中越しに睨み下ろして言うと、和浩が俺の肩に唇を押し付けながらそんなセリフを吐いてくる。
俺もお前は好きだ。しかしそれは可愛い弟としてだ。
断じてこんなことをしたい好きではない。

「てめぇ……」


 
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