シリーズ
□愛に向かって突っ走れ!1
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「石神軍司さん好きだ!俺と付き合って下さい!」
「へ?」
ばきぃいい!!
ドダンッ
右頬に鋭い衝撃。気付いたら視界いっぱいの青い空。
(あれ俺倒れてる?)
「…。はいいいい!?ちょっ石神さん!?」
「石神さん!何だてめぇ!何すんだゴルァアアア!!」
石神と共に下校しようとしていた自称側近、大伴と佐川がが狼狽し叫ぶ。
二人の不良に凄まれた少年は、しかし少しも臆さずにキリッとした顔で言い放った。
「愛の告白です。(ドキッパリ)」
石神軍司、(今年17歳を迎える予定)
人生が狂った瞬間だった。
「愛ぃい!?」
目を丸くし見事に声をハモらせ大伴と佐川が叫ぶ。
「いってぇ…。…なんなんだお前…」
のそりと石神が立ち上がり、殴られた頬を擦った。
「いっ石神さん…!大丈夫ですか!?」
わたわたと石神の周りで慌てる二人を余所に、少年がずいと前に出る。
真っ直ぐに見上げられ、石神も構えた。
この少年、なかなか良い目だ。
「ずっと前からあなたを見ていました。俺のものになってください!」
「…は?」
「おいお前!何ふざけた事言ってんねん!石神君の事殴っておいて何が愛の告白や!」
「そうやそうや!何が愛の告白や!」
混乱がMAXに達したらしい何故か似非関西弁で怒鳴る佐川と、つられて同じく似非関西弁で同調する大伴を「まあまあ」と片手で制し、石神は静かに少年に向き直る。
サラサラと綺麗な黒髪。知的な顔にノンフレーム眼鏡をかけた、見るからに優等生といったタイプだ。
学生服を着ているが、随分と華奢な体をしているように見える。
「いえ、不良の皆さんは拳で愛を語ると書いてあったもので…」
「!?語らねぇし!てか頬赤らめんな!キメェ!!」
「何にしてもいきなり殴るのは良くねぇぞ。第一俺は不良じゃねぇ。」
「そうだそうだ!石神さんは不良じゃ…てええええ!?何言ってんすか石神さん!石神さんうちの番格でしょ!?」
「え…!?」
「うわぁあ!今知りましたって顔してるよ!石神さん、そんだけガタイ良くてスキンヘッドで髭まで生えてんのに、一般生徒なわけないじゃないっすか!」
「ああ、頭か…?うちは寺だからな…。」
ビシィッと音を立て、大伴と佐川が固まった。
「俺の名前は星野美雪といいます。今一年です。」
「そうか。…で、その…」
「入学した時からあなたしか見てませんでした。好きなんです…!」
「…そうか…」
大伴と佐川が何故かフリーズしてしまった為、どうすることも出来ない石神は少年と会話するしかない。
絵に描いたような優等生の如き外見を持つ少年は、名を星野美雪というらしい。
下校する他の生徒が、訝しげな視線を送ってくる。
身長も185cmと高く、その身長に見合った立派な体躯。
そして何よりも綺麗さっぱり剃り上げた頭に、顎に蓄えた顎髭。それが石神の外見だ。
対して、星野の外見は前述した通りの華奢っぷり。
他の生徒から見れば、明らかに不良(石神)が、善良な少年(星野)をカツ上げか何かしているようにしか見えない。
補足すれば、大伴と佐川も大層ガラの悪い外見をしているが石神の迫力には勝てていないくらいだ。
自分を真っ直ぐに見上げてくる少年と、(他に見る対象がないので仕方なく)固まっている大伴と佐川を交互に見る。
17年間生きてきてこんな経験は初めてだ。
自分はどこをどう見ても女には見えないし…
ん?ということはまさか?
「あの、もしかして君女の子…?」
「いえ男です。」
「だよな。」