シリーズ

□愛に向かって突っ走れ!1
2ページ/2ページ


今更ながら自分の置かれた状況に頭が混乱してくる。

ツルツルの頭を撫でながら下を向き唸った。


なんじゃこりゃあ〜〜〜




(どうしよう、やっぱり可愛い…)

そんな石神を見つめながら、星野は胸をときめかせる。

春。あの日、不良に絡まれていた自分を颯爽と現れ助けてくれた憧れのひと。

最初はその外見のあまりの凶悪さに怯んだが、何とかあの日のお礼をしようと、機会を伺うように目線で追っていた。


喧嘩が冗談のように強くて、今ではこの学校の不良のトップに君臨していること。

しかし本当は情に厚くて優しくて、彼の下に集まっている不良達に、まるで兄か父親のように慕われていること。

小さい子供が大好きで、週に何回か近所の保育園でボランティアをし、親の帰りが遅い子の面倒を見ていること。

何となく興味が湧いて色々と調べていくと、外見からは想像も出来ない内容のオンパレードだった。

ある日、石神先輩は料理が巧いとクラスの柄の悪い奴が噂をしていいて。

(いいなぁ。俺もご馳走になりたいな。)

何か、石神さんって良いお嫁さんになりそう。

俺だったら幸せにするのに。


思って、焦って、慌てて、そして自覚してしまった。


俺は、石神さんに恋をしている───


自覚したら堪らなくなった。

意外と可愛い顔で笑う彼を、自分のものにしたい。



「…っっお、おま、お前…っ」

ふと星野が我に帰ると、目の前で石神が顔を真っ赤にして体を震わせていた。

「ぐ、軍司さん…?」

「馬鹿お前!そんな事滔々と語るな!」

「…。え!声に出てました!?」

「めっちゃ語ってたわ!!」

言い切って、あ〜と顔に手を当て唸った石神は、覚悟を決めたように星野を見た。

す…と、その右手が差し出される。

「…その、俺ら男同士だし、何か俺そういうの良くわかんねぇから…」


とりあえず、友達からでいい、んかな。


顔を赤くしボソッと小さく呟いた言葉に、星野の表情がぱああっと明るくなる。

「ありがとうございます絶対幸せにします!大好きです軍司さん!」

「わーっまずは友達からな友達!!」


差し出された石神の右手を両手でしっかりと握り、星野が叫ぶ。

「ゴルァアアア!てめっ石神さんの手ぇ放せやぁああ!」

「俺らは認めねぇからな!」

突如としてフリーズ状態から復活した大伴と佐川が走ってくる。

「走りますよ軍司さん!」

「え、はあ?おい…っ」

星野は石神の手を掴み走り出す。


優しい石神が、自分を断れないだけなのはわかっている。

ただ、でも。

(絶対にここから始めてみせる───)




繋いだ手の暖かい感触が心地良い。

星野は走りながら振り返ると、訳も分からず引きずられている石神に、にこりと微笑んだ。










end
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ