シリーズ
□愛に向かって突っ走れ!1
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今更ながら自分の置かれた状況に頭が混乱してくる。
ツルツルの頭を撫でながら下を向き唸った。
なんじゃこりゃあ〜〜〜
(どうしよう、やっぱり可愛い…)
そんな石神を見つめながら、星野は胸をときめかせる。
春。あの日、不良に絡まれていた自分を颯爽と現れ助けてくれた憧れのひと。
最初はその外見のあまりの凶悪さに怯んだが、何とかあの日のお礼をしようと、機会を伺うように目線で追っていた。
喧嘩が冗談のように強くて、今ではこの学校の不良のトップに君臨していること。
しかし本当は情に厚くて優しくて、彼の下に集まっている不良達に、まるで兄か父親のように慕われていること。
小さい子供が大好きで、週に何回か近所の保育園でボランティアをし、親の帰りが遅い子の面倒を見ていること。
何となく興味が湧いて色々と調べていくと、外見からは想像も出来ない内容のオンパレードだった。
ある日、石神先輩は料理が巧いとクラスの柄の悪い奴が噂をしていいて。
(いいなぁ。俺もご馳走になりたいな。)
何か、石神さんって良いお嫁さんになりそう。
俺だったら幸せにするのに。
思って、焦って、慌てて、そして自覚してしまった。
俺は、石神さんに恋をしている───
自覚したら堪らなくなった。
意外と可愛い顔で笑う彼を、自分のものにしたい。
「…っっお、おま、お前…っ」
ふと星野が我に帰ると、目の前で石神が顔を真っ赤にして体を震わせていた。
「ぐ、軍司さん…?」
「馬鹿お前!そんな事滔々と語るな!」
「…。え!声に出てました!?」
「めっちゃ語ってたわ!!」
言い切って、あ〜と顔に手を当て唸った石神は、覚悟を決めたように星野を見た。
す…と、その右手が差し出される。
「…その、俺ら男同士だし、何か俺そういうの良くわかんねぇから…」
とりあえず、友達からでいい、んかな。
顔を赤くしボソッと小さく呟いた言葉に、星野の表情がぱああっと明るくなる。
「ありがとうございます絶対幸せにします!大好きです軍司さん!」
「わーっまずは友達からな友達!!」
差し出された石神の右手を両手でしっかりと握り、星野が叫ぶ。
「ゴルァアアア!てめっ石神さんの手ぇ放せやぁああ!」
「俺らは認めねぇからな!」
突如としてフリーズ状態から復活した大伴と佐川が走ってくる。
「走りますよ軍司さん!」
「え、はあ?おい…っ」
星野は石神の手を掴み走り出す。
優しい石神が、自分を断れないだけなのはわかっている。
ただ、でも。
(絶対にここから始めてみせる───)
繋いだ手の暖かい感触が心地良い。
星野は走りながら振り返ると、訳も分からず引きずられている石神に、にこりと微笑んだ。
end