シリーズ
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あああ!石神さんにあんな表情をさせてしまうなんて…!
「何だよ軍司君!俺がいるのにあいつらなんか構うなよ!」
「軍司さん、大丈夫です!軍司さんには僕がいますから!」
「今すぐ消えろクソ眼鏡ぇえええ!!!」
左右からの攻撃に、石神は目を固く瞑りやり過ごす選択をしたらしい。
その少し疲れたような顔を見て、二人は思った。
俺らが助けてあげなくちゃ…!!
「おいおい星野ぉ、てめぇよぉ、最近石神さんに付き纏ってるのは何が目的だ?」
放課後、人通りの全くないトイレ。佐川が星野を手洗い場に押し込み、ダン!と個室の扉に押し付ける。
その後ろでは勿論大伴が睨みを効かせていた。
「え?先輩方あの時居ましたよね?僕は石神さんの彼氏になりたいんです。」
「シラッと言うなシラッと!」
こんな状況下でも平素と変わらぬような態度の星野。
まあ以前からの振る舞いも含め、この外見だけは細面の美少年然としている後輩が、相当の変人であることは理解出来ている。
「お前な、彼氏になりたいとか言うけど、石神さん男なんだぞ!?どこが好きなんだよ?!スキンヘッドで髭まで生やしてんのによ!」
星野に凄みながら佐川は思う。
ああすみません石神さん、俺は勿論あなたのそんな厳つい外見も尊敬してます…!
その後ろで大伴は思った。
俺はそんな石神さんを否定するようなことは口が裂けても言わないぜ!
ふ、と星野の視線が二人から外され、そしてそれは眩しいものを見るかのように細められた。
「全部ですよ。あの他人に向けられる慈愛に満ちた笑顔や、面倒見が良くて優しいところも…。料理だって物凄く美味い。軍司さんは父親のような厳しさと、母親のような優しさを兼ね備えています。バスケをしているところなんて、高校生レベルとは思えない、一人NBAですよ。」
星野の言葉を聞いて、二人はうんうんと頷いていた。
そうそう、そうなんだよ。お前分かってるよ、うん。
「で、僕はそんな軍司さんに頼られ、信頼されるような関係になりたいんです。そして行く行くは彼氏になって…あの軍司さんを快楽で鳴かせて、ピーして、軍司さんの逞しい体を僕のピーでガンガピーて…ってやばい、喋り過ぎました。」
散々放送禁止用語で空想上の石神をなぶりものにした星野は、固まる二人の前で照れたように参ったな〜と頭を掻いている。
星野は変人ではなく、変態だった。
「ああ!?軍司君とこの先どうなりたいかだあ!?そ、そりゃあな、将来は結婚すんぜ?なんたって嫁さんになってもらうって決めたからな。」
少し頬を赤らめながら言う不破に、大伴が半分呆れたような顔で言った。
「…じゃあお前もあれか、石神さんにピーしたりピーピーなことしてピーピーピーしたいとか思っ」
バキィイイ!!
不破の右拳が大伴の左頬にクリーンヒットした。
「大伴ぉおお!?」
地面に倒れた大伴に慌てて駆け寄る佐川。
「ふざけんなよテメーラぁああ!!俺はっ俺はそんな不埒な目で軍司君を見てねぇええ!!」
コンゼンコーショーはしねぇんだあああ!!
顔を真っ赤にして走り去る不破を見送る。地面に伸びたままの大伴を佐川が抱き起こした状態で。
「…あいつぜってぇ婚前交渉漢字知らねぇよな…」
「ああ…いってて…。…おい佐川…っ!」
「ん…?!ひい?!不破が帰ってくる!?早く立て!逃げるぞ!!」
「おい待ててめえらぁああ!!」
ずざぁああーーー!!
土煙を巻き上げ、不破が地面に膝を着いている二人の前に舞い戻ってきた。
猫目を限界まで釣り上げ、般若のような顔になっている。
怖い、怖すぎる…!!
不破を見上げる大伴と佐川、二人の脳内に不気味な笑顔の不破にボコボコにされた記憶が甦る。(複数回)
「さっき“お前も”って言ったよなぁ…?」
「ええ…?」
「軍司君にピーしてピ、ピピーして…っっぶううっ」
「!?不破っ鼻血が!」
「うわ汚ぇええ!!シャツにかかった!!」
「うるせぇえ!!何処のどいつなんだその不埒野郎は!!」
鼻血を流す最凶の不良・不破にどつかれる二人の不良。
下校途中の周囲の生徒達は足早に横を駆け抜けた。
何が何でも関わりたくない。
「星野だよ星野!あいつしかいねぇだろ!」
頭を庇うように手でガードし言う佐川に、ピタッと不破の動きが止まる。
ゴゴゴゴゴ…
「お、おい、不破…?」
「どうしたんだよ…」
「っあんのガキャアアアーー!!とことん人を馬鹿にしやがって!!」