シリーズ

□2
1ページ/5ページ


「圭人ぉおお―――っ!?お前何したらこんななるんだぁあああ!!」


はげはげはげ


校舎の裏に転がり、弱々しく唸る学ランを着たハゲ頭3人。
いやハゲは言い過ぎか。えと、ムラだらけの5厘刈り?

その横には携帯電話で楽しそうに会話中の、俺様何様神様より偉いですよ長浜圭人。
その右手にはバリカン。
…バリカン!?何でそんな物持ってんだよ何処から出したんだよ犯人はお前かいやお前しかこんな事出来る奴居ねぇけど
てかその転がってるハゲ共3年生の不良グループの人達じゃね?

地面を良く見てみれば、茶色の毛や金色の毛、黒くて長い毛なんかも散らばっている。

目の前では未だに携帯電話で楽しそうに話している圭人。

このイカレピンク頭、いやこの間の豚ちゃんのセリフだけど、俺がその頭をバリカンでハゲにしてやりたいくらいだ…


「うんうん、まなみちゃんもあんま悩み過ぎちゃ駄目だよ〜。俺でよかったら話聞くし。」


まなみか。電話の相手は女かよ…
まなみねぇ、まなみ。



まなみ!?



「圭人その電話…っ!」

「ごめん、五月蝿いお邪魔虫が来ちゃったからまたね〜。ばいばいまなみちゃーんっあーもう何アッキー?いつもうるせぇんだよ!」


肩に掛けた手を払われ、ついでに太ももに下段蹴りをぶち込まれる。

痛ぇ。しかし痛がっている場合じゃない。

「お前、今の電話…っ」

「そう、まなみちゃん。最近友達関係で悩んでるんだってさ。まだ中学生なのに大変だよな〜。」

そんな、まなみ。
お前お兄ちゃんには何も言って来ないじゃないか…!?

え、何で?何でコイツには相談してんの?
こんな悪魔に人間の悩みを相談したって無駄だろ、てゆーか

お兄ちゃんには!?お兄ちゃんには相談して来ないのか…!?


「ちょーね、あっきい、ボサッとしてないで行くぞ〜。次現国じゃん。」

「あ、ああ、うん…」


どうしてだまなみ、俺じゃなくて何でこのイカレピンク頭…?


「おい、早くしろっつってんだろ!」

「うっ」

背中を蹴られ、圭人の顔を見る。

「ああ?何だよ?」

「イヤナンデモネェ…」

あれか、多分顔か。顔なのかまなみ。

でもいくら顔が良くても、こいつは悪魔だぞ。








はあああ、どうしよう。

まなみに直接聞くべきか、言ってくるまで待つべきか…

あんま構い過ぎてウザイと思われたら嫌だし、そっとしとくのが一番かもしれない。


いやでも、さり気なく遠回しに聞いてみようかな…



「彰宏君、ケイタイなんか睨み付けてどうしたんすか、何かムカつく奴でもいるんすか。」

「え?」

携帯電話から目を外してチラッと見れば、そこにはクラスメートの小田原君。
同い年なのに、何故か敬語もどきで話してくる変な奴。

「あっすんません!俺邪魔でしたかね!?」

そして何故かビクッとしてる。
何なんですかあなたこそ。

「いや、え、全然邪魔じゃないよ、てか別にムカつく奴とかいねぇし。」

いや、強いて言うならムカつくのは自分だ。
妹の悩みも聞いてやれない駄目兄貴だったんだよ、俺…


「そっすか!?じゃ、あの…っ隣良いっすかね!?」

…いや、別に良いけど…
何でそんな嬉しそうなんだ?
てか、俺の許可なんか一々いらないだろ。

「うん、どうぞ。」

隣に腰掛けた小田原君と俺は、横並びで体育倉庫に背を預けた。

校舎の裏、体育倉庫の横。

この学校は学年とか不良としての格とかで、それぞれ溜まり場に出来る所が違う。
一番偉いのが、定番通り屋上。

あとは良く知らないが、ここはよく一年がたまってるから、多分俺も使って良いんだと思う。


「しっかし、長浜さん凄いっすよね―。今日、三年の三木さん達ハゲにしちゃったらしいじゃないですか。」

あ、それ今朝の。
やっぱ三年だったんだ、あの人達…

圭人酷ぇよな。ありゃ遣りすぎだよ。

「しかも、生徒指導の諸持からパクってきたバリカンらしいっす。やっぱ長浜さんはやること違いますね。」

…圭人、俺らまだ入学して3ヶ月経たないんだぞ。
何処まで暴走する気だ…

…。

いや、まだ大したことないか、うん。


「しかしヤバくないですかね、三木さん達って、この学校のトップグループの幹部ですよ。長浜さん大丈夫ですかね…」

小田原君、すげぇ心配そうな顔してる。

大丈夫だろあいつなら。
いやむしろ、痛い目に遭えるなら遭った方が良い。

「大丈夫だよ。」

それよりもまなみだ、まなみ。
メールの方が良いかな。
いやだから、言ってくるまで待つか…ううん…


「余裕っすね、さすが西中の悪魔と侍…ってちょっと、彰宏君…!」

ん?何でどつくの小田原君。
顔引きつってるぞ。

あれ、足音…?
ザッザッ、多分、5人くれぇの。


「島崎彰宏だな。」


視界に影。
座っている俺達を囲むように、ガタイの良いのが5人。



 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ