シリーズ

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多分3年…。今朝の圭人の件だよなぁ…。

うわ、小田原君ビビっちゃってんじゃん。

「はい、俺です。」

ん、立つとそうでもないか。
俺よかデカいのは2人だな。

じり…と少し後ろに下がって、先輩達が距離をとる。

小田原君も立とうとしたけど、それは手で制して止める。
圭人のやらかしたことで巻き込む訳にはいかないし。

「ついて来い。屋上だ。」

うわぁ、いきなり不良グループのトップと対面かよおぉお…

ああ、また頭痛が。ただの頭痛じゃねぇ、もう凄い高レベルの頭痛。

屋上目指して先輩達の後をついていく間、廊下で俺を見た他の生徒が慌てて目を反らす。

そうですよね、入学早々トップグループに連行されてる1年なんてドン引きですよね。

最悪だ、もう俺の高校生活ブチ壊しだ。

階段を登り、開いた扉の向こうには青空。
そんな晴れ晴れした気分じゃねえよマジで。

はい、屋上初上陸。
別に屋上なんか一生来なくて良かったのによ。


「島崎、てめぇらやってくれたなぁ。」


10人くらい並んだ、色とりどりの髪型の不良先輩達。
その真ん中を割るように現れたのは、オレンジっぽい長髪の背の高い人。


雰囲気からして、この人が現在この学校のトップなんだろう。
ああ、つかあれだ、圭人と同じ系統の顔してるよ、俺の苦手な。目眩してきた…

「島崎。長浜呼んでくれないか?」

オレンジ頭の人が言う。

あーマジで頭痛ぇ。

「お断りします。」

こんなとこにあいつ呼んだら収集つかねぇし、絶対俺が酷い目に合う。

先輩達がどよめいた。

「お前、寺門さんは北高のトップなんだぞ!?いくらお前らが西中で有名だったからってなぁ、調子こいてるとマジ殺すぞ!」

茶髪の先輩が怒鳴る。
あ、眉毛無いこの人。

てか西中で有名て。西中で有名だったのはあの悪魔だけだよ…


「まあまあ、吉岡。こいつがやったわけじゃない。いいからそんなに怒鳴るなよ。」

まあまあとその…吉岡先輩?か、吉岡先輩を手で制し、オレンジ頭…寺門さんか。寺門先輩が俺の前に歩いてきた。

不良グループのトップらしい、余裕の立ち居振る舞い。
なんちゅーか優雅な人だよな。顔もゴージャスだし。

「相棒想いだな、島崎。…噂通り、良い目してんじゃん。」

え、目?目なんか普通だよ。

つか相棒想いって、想ってねぇよ全然。つか相棒!?あれ相棒じゃなくて悪魔だし!


相棒だったら、俺に強制フェラさせたりケツに突っ込んだりなんてとんでもない事はしない筈だ。

「違います、そんなんじゃないです。けど、すみません、呼ぶつもりはないです。」

寺門先輩の顔を正面から真っ直ぐに見て、言う。
生意気な奴だと思われないように、な。こんな人数、相手にしてらんねえし。

寺門先輩は笑顔だ。何ですか、変でしたか。

「やっぱ良いな、お前。」

…へ!?

「俺のグループに入らねぇか、島崎。高校生活、楽しく過ごさせてやんぜ。」

柔らかく笑んでくる瞳と目が合う。

てか、ちょっと待ってくれ。
このグループって、つまり不良グループだろ?

俺不良じゃないのに不良グループに?

つか不良グループに入った時点で平凡な高校生活なんて無くなってしまうわけで、それは困る、無理。
ただでさえあの悪魔に、人生を脅かされ続けてるっていうのに。

「いえ、俺グループに入るつもりはありません。」

…袋にされるかもな…

10対1じゃさすがに無理だ。

無言で押し黙る先輩達を前に、拳にゆっくりと力を入れる。
やられる前に、2〜3人でも倒しておけば、袋にされた時に少しは楽だ。

寺門先輩が、肩より少し長い髪を掻き上げ、笑った。


「ははは!やっぱ良いなぁ、島崎彰宏。益々気に入ったぜ。」

「え、いや、あ、ありがとうございます…?」

嘘、何がよ!?

「何が何でも手に入れてぇなあ…。なあ…?」


寺門先輩の雰囲気が変わる。


柔和だった瞳がギラリと光り、こっちを見る目が剣呑な雰囲気を孕んだ。

…やべえな、今日病院とか行きたくないんだが…

ガシッ


「へ!?」


寺門先輩に集中し過ぎて、周りが見えていなかったことに今更気付く。

いつの間にか俺の背後に回り込んでいた他の先輩に、両手を背中で一纏めに縛られてしまっていた。

更に足と肩に手をかけられ、強引に屋上に引き倒される。

じょ、状況一気に最悪じゃね!?

てか、10対1とかでわざわざ縛るか!?

「おい、お前ら念の為入り口塞いどけ。」

ううっ重い…!下敷きの腕が痛ぇ!人の上に馬乗りになってんじゃねぇよ!

寺門先輩が俺の腹の上に跨って、悠然と見下ろしてくる。

しかし何なんだこの状況は。全員に袋にされんのかと思ってたんだが、今視界に入る範囲に他の不良連中はいない。


「この状況でも目は鋭いままか、島崎。」

…ひえ!?何故俺の顔を撫でるんだこの人!?

「西中の侍、島崎彰宏。お前が入学してくるって聞いてさ。…絶対にモノにしてやるって決めてたんだよ。」

うっとり。まさにそんな感じで言った寺門先輩は、俺が着ている青いシャツを胸の上までたくしあげた。



 
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