シリーズ
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「おい鷹臣、お前、俺に抱かれる前にヤってきたのか…?」
不機嫌そうに剣を増した増田響地に、桜澤は困ったように笑いかける。
「やだなあ、だから風呂は別々にしようって言ったじゃないっすか。響地さん勝手に入って来ちゃうんスもん。」
増田が見た光景、それは、一緒に入浴する事を拒んだ桜澤が自身の肛門に指を這わせ、中に吐き出された精液を掻き出そうとしているところだった。
ちっと低く舌打ちしズカズカと浴室内に入り込んだ増田は、その勢いのまま桜澤の手からシャワーを奪い取る。
桜澤がキョトンとした顔で増田を見上げた。
「響地さん?」
「俺がやってやる。だから、何してきたのか正直に話せよ。」
桜澤を後ろから抱き込み、その滑らかで白い項に吸い付く。
素直に身を任せる桜澤を可愛く思う反面、酷く悲しくもなる。
お前は、誰にでもこうして───
【黒に染まる】2
「馬鹿かお前は?お人好し過ぎるだろ!」
「だって女の子っすよ?レイプなんかされたらとんでもないですよ。」
「だからってなぁ…」
「ダメダメ。女の子はやっぱいつでもフワフワしてて、幸せそうじゃなきゃ。」
入浴を終え、二人でホテルのべ
ッドに腰掛けながら聞いたいた話の内容に、増田が額を手で押さえ深く溜め息を吐く。
内容は、レイプされそうになった同級生女子を助ける替わりに桜澤が輪姦されてきたという、卒倒物のエピソードだ。
桜澤があまりにも頓着無しに語るため俄には信じがたいが、増田はこの少年が嘘を吐かない事は知っていたし、何より。
実際桜澤ならやりそうな事だった。
「…あの公園のあたりに出る奴らだな…質の悪いガキ共のグループなら知ってる。今度潰しとくか。」
「え、マジっすか?助かります、あそこうちの学校の奴とか結構通るんですよ。」
心底嬉しそうに笑うその笑顔は、間違いなく14歳の少年のものだ。
入浴して下りた前髪が、より一層普段よりその外見を幼くしている。
増田は桜澤の手を取り、ゆっくりとベッドに押し倒した。
「ああ、跡形も無く潰してやる。だから、次からは絶対にそんな無茶はすんな。」
まだ濡れたままの漆黒の髪を撫で、増田は言い聞かせるように桜澤に言う。
桜澤は答えずに、増田の眼鏡を外し唇に口付けた。
事前に見せた桜澤の表情、にっと笑んでみせたその表情は先程の少年らしさの面影はなく妖艶で、キスを受けながら自分の体がどんどん
と高ぶっていくのを増田は感じる。
しかし、心の一部分は冷静な判断を下す。
桜澤は自分と約束をしなかったのだ、と。
「んっあ…っ響地さん…!ひぁあ…っ」
「っ鷹臣…っ」
深くまで突き入れ、揺さぶる。
貪欲に増田の雄を飲み込んだそこは、本来排泄器官であったことを忘れたように熱く熟れ、包み込む。
桜澤の健康そうな若い体が、快楽に酔いしれ、淫らに朱に染まり跳ねる光景は劣情を煽られる。
切れ上がった目尻がほんのりと赤くなり、色気を際立たせていた。
たまらずに、その白い首筋に吸い付く。
「っはぁ…っだめだって、響地さ…っそこ、見える…っ」
「いいじゃないか、お前が俺の物だって証拠だ…、っく…っ」
「あああっ」
桜澤が増田の腕を掴み、身を震わせる。
腕の中のまだ成長しきれていない体を抱き締めた。
「愛してる、鷹臣…」
重なったまま視線を合わせれば、一瞬だけ怯えたように揺らぐ視線。
しかしそれは直ぐに掻き消え、普段の誘うような笑みが浮かぶ。
「響地さん…」
「ん…」
頬に伸びてきた手に請われるまま、口付けをする。
決して自らは抱き付いてこないその少年を、守るように
抱き締めながら。
『おい、その辺にしとけ。』
増田が桜澤に初めて逢ったのは、もう半年以上も前の話になる。
組の事務所、自分の部下達が寄ってたかって輪姦していた少年。
『いや、増田さん、あのガキの方から誘ってくるんですって、凄いですよ、その辺の商売女なんか話にならないくらい良いですよ。』
増田は眉間に深い縦皺を作る。
後先を全く考えていない愚かな部下の言動に不快感を露わにした。
『程々にしておけと言ってるんだ。万が一死んだら誰が責任を取る。お前がムショに入るか?堅気の男子学生を輪姦して殺しました、中で相当良い身分になれるだろうな?あ?』
増田の冷徹な視線に睨みおろされ、恐怖に焦った部下が「もう止めだ止め!」と叫ぶ。
興奮の渦中にいた他の面々も、声を張り上げた仲間の隣にいる増田を見て顔をひきつらせた。
実に素早い動作で、めいめいがそれまで遊んでいたモノから離れる。
『おいガキ、生きてるか。』
近寄り、様々な体液で汚れたまま床に横たわっている少年の頭を、革靴で小突く。
閉じられていた少年の目が、パッと開いた。
増田は一瞬、たじろいだ。
真っ直ぐな視線が、自分を貫通して何かを見上げる。