シリーズ

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「ひっぐぅ…っっああっけ、とぉ…っっもっイヤダ、あ…っ」

「っく、はぁ…っ、は…っもう少し…っ我慢しろへたれ…!」

「へたれ…!?ううあっ」


低く唸る圭人の声が、耳に響く。

体内で更にデカくなって痛みを増したものに、俺は目を固く瞑った。

「っいっうああ…っ」

「っふ…っ」

圭人が俺の肩にかじりついて、何度か体を揺らす。

だから、何でお前はいっつも中出しなんだよ…







「っは〜!超スッキリ!」

悪魔が俺の隣で、仰向けのまま背伸びをする。

なんつー爽快な笑顔だよ、しかも心なしか肌が艶めいて見えるのは気のせいか?
俺は体中ギシギシ痛むわ、ケツにまだ何か入ってる感じがするわで動かす気力もないっつーに。

「…圭人、俺これもうヤりたくねぇ…。有り得ねぇぐれぇ痛ぇし…」

というか何というかもう、後遺症が。この年で体ガタガタって。

「は?何で?」

えっそんな不思議そうな顔されましても。
てか俺理由言ったじゃん!

「だから痛ぇんだって。」

げ!お前人のベッドの上で煙草吸ってんじゃねえよ!火ぃついたらどうすんだ!

「あっきぃ。」


呼ばれて顔を上げる。超至近距離で副流煙を顔面に吐き出された。

「げっげほげほ…っ圭人てめえ!」

「経験不足だからだろ?」

「は?」

「だからさ。痛いのはお前が経験不足だからだろっつってんの。」

ごんっ

下から顎をどつかれ仰け反る。

うおおっ何すんだこいつっ

「けっ経験不足…?」

「そう。俺に文句言う前に自分の経験値上げろ。」

にっこり笑ったその場違いに綺麗な笑顔。

全身の痛みに頭痛と目眩までしだして、俺はベッドに突っ伏した。

てか狭ぇー、このベッドに俺ら二人は無理だ…









経験値ねぇ、経験値。
それを上げれば、あれは痛くなくなるもんなのか?


「どうしたんすか彰宏君、ノートと睨めっこなんかして。何かムカつく奴でもいるんすか。」

「あ、小田原君。」

俺の前の席に腰掛け、話し掛けてきたクラスメートの小田原。
何かにつけて話し掛けてくれる良い人だけど、何故かいつも敬語なのが気になる。

てか俺、小田原君から見たらそんないつも誰かに腹立ててそうなのか…?

「違うよ、ちょっと考えごとしてたんだ。」


「え、もしかしてノートに書いてあるコレですか?経験値を得る方法か〜。やっぱ強いの(モンスターor敵)とヤり(戦い)まくるしかないっすよね。」

「つつ、強いの?ヤりまくる!?」

小田原君、そんな簡単に言うけども。
強いのとヤったら、上がるもんなのか経験値って…?

ちゅーかちゅーか。あんな事そんな出来ねぇよ、嫌だよ、あり得ねえよ。
圭人を相手にするだけで死にそうだってのに。

そもそもあれは男同士でやることではない。

ん…?でも確かに圭人より凄いのを経験すれば、大丈夫なような気もするな。俺の方が強くなれば。

そうだアレだ、やっぱ俺があの悪魔より弱いのが問題なんだろう。

だからきっとまなみだって、圭人にあんななついちまって…

うう…まなみ、頼り無い兄ちゃんでごめんなっ


「そっか、ありがとう小田原君!俺頑張ってみるよ。」

「えっいやいやっ俺で良ければ協力しますんで言って下さい。知ってるのかもしれないし。」

「?うん。」

ガラッ

「島崎彰宏ぉ!」

「は、はい?」

何だ何だ、何故生徒指導諸持は、いきなり教室に入ってきて俺を呼ぶんだ。

「…島崎。長浜の件で話がある。ちょっと来てくれ。」


重々しい口調で言う諸持、クラスのみんなの白い視線。
うう、俺が何かしたわけじゃねぇのに。

「分かりました…」

心配そうな小田原君に別れを告げ、諸持に促されるままに廊下に出る。

「はぁ〜〜〜〜〜…」

諸持はこの世の全てに疲れ果てたような顔で、長く溜め息を吐いた。

うわ、ただでさえ痩せすぎの河童なのに、何か今にも倒れそうだぞ先生。

そういや河童って死ぬのか?
死んだら河童の幽霊とかになるのか?
うわ怖ぇ。妖怪で幽霊って何者?兎に角最強には違いない。

「実はな、島崎…。先生、長浜にまたバリカン盗られちゃったんだ…。」

…。は?

「早く返して貰わないと、またこの間みたく強制五厘刈り被害者が出ちゃうんだ、頼む、取り返してきてくれ…!!」

ええーーー!!??

いやいやいや先生、俺に頭なんか下げなくても。
てか圭人、またお前は…!

思い出す、数日前に圭人に頭を丸刈りにされた先輩達の姿。
あまりに短く剃られたためにカラーリングすら出来ていないその頭は、多少の迫力はあれど可哀想だった。

「それに、実はあれ…思い出のバリカンでさ…。もとは俺の高校時代の担任の持ち物だったんだ…。」



 
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