シリーズ
□3
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「っは、桜澤、やっぱお前の中、最高にいいな…っ」
「んっあっはぁ…っ」
人気のない体育用具室の裏、スーツの男が学生服を着た男子生徒───桜澤鷹臣を壁に押し付け立たせ、背後から激しく腰をぶつけている。
桜澤はその激しい抽送に背をしならせ、身を震わせ甘く喘ぐ。
潤んだ瞳で背後の人物を振り返り、快楽に濡れた唇をゆっくりと開く。
「あっ良い…っ森っ倉せんせぇ…っもっと…っ」
「っく、いくらでもくれてやるよ…っ」
煽られるように、男───森倉の腰の動きがスピードを上げる。
ガクガクと桜澤の足が震え、快感に跳ねる体を森倉が抱え更に突き込む。
「っ桜澤…っ」
「あ───」
息を荒げた森倉が桜澤の中で果て、一気に桜澤の起立した性器を扱きあげる。
ブルッと身を震わせた桜澤の精液が、倉庫の灰色の壁を白く汚した。
「黒に染まる3」
「せんせー、先生が激し過ぎて腰痛ぇっすよーっ」
「悪い悪い、お前って俺とセックスの相性抜群だからさ、加減出来ないっていうか…」
スマンな、バツの悪さを誤魔化すように笑う森倉に、桜澤がむくれてみせる。
「5時間目体育なのに…」
「ああもう悪かった!ごめん!先生が大人気ありませんでした!今日晩飯食わせてやるから!何でも好きなの!」
拝むように謝罪する森倉に、桜澤がそれなら…と思案し始める。
そのあどけない少年の表情が可愛くて、森倉は桜澤の額に口付けた。
「せんせ?」
「で、晩飯食ったら俺の部屋でしないか?」
ニッと笑めば、桜澤は眉をしかめ森倉からやや距離をとる。
「森倉先生スケベ過ぎっすよ。」
「当然だ。男はみんなスケベな生き物なんだ。」
目を丸くする桜澤のワックスで立てた黒髪を撫で、森倉は上機嫌そうに笑った。
「ねえ桜澤君、ちょっと聞いてもらいたいことがあるんだ…」
「ん?おー長野、どったの?」
放課後、帰り支度を済ませた桜澤に話し掛けてきたのは、同じクラスの長野学だった。
長野はどちらかというと地味で、クラスでも別段目立たない生徒だ。
長い前髪に隠れがちな目を、桜澤が下から覗くように見上げる。
長野が焦ったように身を引いた。
「いや、あの、ここじゃ難だから…もし良かったら、理科室で話さない…?」
怖ず怖ずとした口調で紡がれる言葉。
その内容はあまりに不自然だ。
普段全く桜澤と接点の無い長野が、何故理科室等へと誘うのか。
「別に良いぜ?」
ニッと笑い、荷物を担ぐ。
桜澤は長野の先に立ち、教室の扉を開けた。
理科室には3人先客がいた。
いずれもこの嵐谷西中の二年、クラスは違えど桜澤と同学年だ。
長野と同じく、取り立てて目立つことのない、ごく一般的な中学生という表現がぴったり当てはまる容姿をしている。
後ろに長野、目前に三人。囲まれても、桜澤の表情は特に変化はしない。
変わらず、人なつこい笑みを浮かべている。
「で、俺に何の話があるんだよ、長野?」
桜澤はとりあえず、自分が名前の分かる長野に話を振る。
笑んではいるが、桜澤の目尻の切れ上がった目は一瞬貫くような鋭さを見せた。
ビクリと長野が後ずさる。
無言の長野に変わり応えたのは、先にいた三人だった。
「お、桜澤君、俺ら、見たんだ。」
一人が口を開けば、全員が口々に言い始める。
「お前、森倉先生とやってただろ…!?」
「お、男同士で…っとんでもねえよ…!」
一人が震える手で制服のポケットから取り出したのは、携帯電話。
操作し、桜澤の目前に突き付けられた時。
画面には、桜澤と、それを背後から抱く数学教諭の森倉の姿が映し出されていた。
桜澤がきりりとした一直線の眉を、片眉だけ僅かに吊り上げる。
桜澤の冷淡な反応とは逆に、周囲のテンションは異様な盛り上がりを見せていた。
凡庸な少年達が、性欲にまみれた雄へと変貌する。
「なあ、写真もとってあるんだぜ?バラされたら困るだろ、桜澤君…?」
「僕達の言うこと、聞くよな…?」
「抵抗したら、バラまくぞ。」
緊張と興奮に汗ばむ手が、桜澤の体にかかる。
「あ…どうすれば、いいんだ…?」
声を震わせ哀願し、怯えたように上目遣いで全員を見てやる。
途端、理科室の黒い実験台の上に引き倒された。
自分の体に群がり鼻息を荒くしている3人に、桜澤は時折吐息を漏らすだけで酷く冷めた表情をしていた、が。
入り口付近で怯えたように立ち竦んでいる長野と目が合うと、それまでとは一変した表情を見せる。
目尻の切れ上がった目を半眼にし、視線を流して、唇を淫猥に持ち上げて。
長野が顔を一瞬で赤くした。
彼が見たもの、それは男三人に体をまさぐられている桜澤の、酷く妖艶な笑みだった。
「んっんむっん…っ」