シリーズ

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「彰宏君彰宏君!とんでもない事が起きたらしいっすよ!」

朝、教室に行く前に体育倉庫の裏に来てみれば、先に居た小田原君が偉い深刻そうな顔で話し掛けてきた。

見れば、そこにタムロしている他の一年生のみんなもザワザワと落ち着かない感じだ。

「え、何どうしたの…?」

思わず声を潜めて聞けば、小田原君も何故か声を潜めて言う。

「大変なんすよ、寺門さん達のグループから盗まれたらしいんすよ、ツチノコのぬいぐるみが。」






「隣の悪魔4」






何なんだ、ツチノコのぬいぐるみって…

何でそんなもんを先輩達は持っていたんだろうか。誰かの思い出の品だったとかなのか?

何にせよそんな大事なもんを学校に持ってくる方も盗る方もどうかしてる、全く。

でもなぁ。大切なぬいぐるみなら、盗られた人は困ってるだろうな。早く見つかればいいけど…

ん?何だ教科書机に入っていかねーぞ何かつっかえて


ゴロン


「………………」


机の中に詰まっていたもの。

それは茶色の太った蛇のぬいぐるみだった。

とっさにシャツの下にしまい込む。

すー、はー…






馬鹿これツチノコじゃね……!!?


左よし、右よし、前よし後ろよし。
クラスの誰も見ていないようだ。


どうしてこんな物が俺の机の中に…!



ふおっ!?び、びびった、こんな時に携帯のバイブが…


パカッ


From 長浜圭人
件名
本文

そのねずみ、返しといて





おーまーえーーー!!


キリキリと痛み出した胃を誤魔化すために、シャツの下のツチノコを強く強く抱き込む。

ああ、やっぱりか。
いや全然予想はしてなかったけどやっぱりお前がやらかしたのか圭人。

何考えてんだお前は。いつか刺されるぞ本当に。

つか返しておいてって。
誰に?寺門にか?

うわ嫌だぁああ、だって怖ぇよあの人、そりゃ悪魔よりはマシだろうけど二度と関わりたくねぇよ…

どうしようどうしようどうしよう。

マジで頭まで痛くなってきた。
保健の先生に痛み止め貰って来ようかな…

グラグラとふらつく足で教室の教壇側の出入り口の前に立つ。今更どうにも出来ないしツチノコはシャツの下に抱えたままだ。

HRまではまだ時間がある。保健室に行って帰ってきても間に合うはずだ。

扉を開ける。廊下にはまだ他の生徒もいた。


「島崎いるかぁああ!!」

「はい?」


そして廊下に出ると同時、俺の名がもの凄い怒鳴り声で呼ばれた。

教室の反対側の出入り口、丸刈り含む3人と目が合う。

あれ絶対3年生でしかも悪魔の被害者だろ

ボトッと足に何かがぶつかる。
俺が今までシャツの下に抱えていたツチノコが、廊下に転がっていた。


「あー!お前それ…!!」

「てんめっお前が犯人だったのか島崎!?とことん3年馬鹿にしやがって!!」

「今回はただじゃ済ませねぇぞ!!」

叫びながら走ってくる不良先輩達。
教室にいた同級生や廊下の生徒が何事かと俺を見ている。

捕まったらマズい。

とっさにツチノコのぬいぐるみを拾い、廊下を先輩達とは逆方向に逃げた。

俺は今まで一度として先輩達を馬鹿にしたこともなければ、無事に済んだことすらないっちゅーに…!

圭人、圭人、圭人。

もし俺に恨みがあるならガチで言ってくれ頼むから。
このままじゃ俺、お前の濡れ衣でいつか絶対殺されるぞ。

は!?それが狙いか!?

廊下を曲がって直ぐのトイレに隠れる。
個室に入り、バタバタと足音が廊下を通過していくのを聞いた。

ま、まいたみたいだ…

息を切らせながら、洋式便器に腰掛ける。


つか、このツチノコ何なんだよ…

三年生の不良グループの血相の変え具合から見ても、相当大事なもののようだ、いや大事なものに違いない。

昔からそうだ。圭人は人が一番されて嫌がる事をピンポイントで的確にやる男だった。
もう人間業の域を超えてる。まさに悪魔だから為せる技だと思う。

両手でツチノコのぬいぐるみを持って、出るのは溜め息。

ちゅーか何故、なにゆえ、どうしてツチノコ。
もっとこう、何か無かったのか他に。

触り心地はいいな。柴犬みてぇ。

いやいや、それよりも何で俺はこれ拾って逃げちゃったんだろう…
あそこに落としたままにするか、素直に返せば良かったんだよな。


はああー…

とりあえず、あの馬鹿に電話してみるか…。


プププププ

ブツッ
ツー、ツー


ピッ

プププププっ

ブツッ
ツー、ツー




えっ繋がんねー!
まさかあいつ、俺のこと着信拒否にしてねぇか…?


し、信じられん…

もう登録名悪魔とかにしてやろう。

つかマジでどうする、この状況。これこっそり捨ててしまおか。
あんな不良共の相手していられない、体がいくつあっても保たん。



ん?またバイブが…圭人か?




 
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