シリーズ

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「彰宏、今日も可愛いな。」

ピクッ

「彰宏ちゃんは見てて飽きないねぇ。触っちゃおうかな。」

ピクピクッ

ビクッ

!?

「おいコラ翔ってめぇ彰宏のドコ触ってやがる!」

「おっぱい。」

「手ぇ離せ!」

「いーやー。ん?由利こそ何彰宏ちゃんのケツ揉んでんだよ!そこは俺のもんだ!」


「いい加減にしろおおおおおお!!」


何だ何だ何なんだ朝っぱらからこれは!?

玄関で上靴に履き替えるなり左右片方ずつに貼り付いてきた、この学校の不良ツートップ。
ワケの分からない事を耳元で話し、人の体をもみくちゃにし出したその不気味な二人に、俺の長い堪忍袋の緒もブツッと行ってしまった。
渾身の力で振り払う。

途端にひらりと身を交わす寺門と名張さん。
とことん嫌な奴らだ…

「まあいい、じゃあな彰宏、また後でな。」

「ばーい、彰宏ちゃん。」

二度と来んな!

その背中が見えなくなるまで睨み付ける。
怒りにブルブル体が震え、声すら出ない。

くそ!あいつら何なんだ本当に…!人に無理矢理突っ込んだ揚げ句に嫌がらせまでしにきて…!

は!?


気が付けば周りに人だかりが出来ており、俺と目があった何人かの生徒が慌てて目を反らした。

ガーンッ

このままじゃそのうち学校に来れなくなる。
居たたまれなくなり、下を向いてササッとその場から離れた。

うう、背中に突き刺さるみんなの視線が痛い…







「隣の悪魔5」






「彰宏君おはようございます!あのっこれ使って下さいっ」

朝一番、席に着いた俺に小田原君がくれたのは、クッションだった。

…な、何で?

「あ、有難う…?」

わ、これ低反発クッションてやつじゃねぇの。良いのか、貰っちゃって。

「彰宏君、体大丈夫っすか…?」

え、俺体は大丈夫だけど…いやちょっと胃が痛いか。

つか俺より、小田原君の方が体調が悪そうだ。
不自然に顔が赤いし、熱でもあるんじゃないだろうか。

「小田原君こそ大丈夫?顔赤いよ?」

「ええ!?あっいやあのっすみません!」

うわ、小田原君ますます真っ赤になって顔伏せちゃったよ。
俺なんかマズい事言ったのか…?

ふと視線を外すと、教室の隅の圭人の席が目に入る。
あいつまた今日もサボる気なんだろうか。

中学と違って、高校は出席日数足りねぇと進級出来ないっつーに。
つかツチノコ(いや蛇だったらしいけど)の事も未だに聞けてねぇな。学校ぐらい来いっつーの。

ん?待てよ?もしあいつが留年して学年変われば、少しは俺の被害も減るんじゃないか。
学年が違えば校舎も変わるし。

おお?高校生活に希望が見えて来たぞ…!



「何朝から機嫌良くしてんだ。キメェ。」


え?


ガンッ


頭に物凄く重い衝撃が走った。
吹き飛ぶように椅子から転げ落ち、打った左肘には激痛。

何が起きたのかなんて良く分かってる、こんな突然の理不尽な暴力を振るう人間なんか一人しかいない。
いや人間じゃねえ、悪魔だな。

「はぁろーアッキー。そうそう、その辛気くせぇ面の方が似合ってるって。」

人の顔を指差してゲラゲラ笑うイカレピンク頭、大魔王・長浜圭人。


「あ〜、圭人君じゃん、おはよ〜!」

「おはよー。」

圭人に気付いたクラスのギャル系女子グループが、圭人に手を振る。
圭人もそれに愛想良く挨拶を返した。
俺の存在には一切触れない女の子達。

……何なんですかこの差は。

人間どんなに素行不良でも、やはり顔なのだろうか。

不細工には生き難い嫌な時代だ。

はあ、溜め息を吐いた瞬間に脳天を叩かれる。
痛い痛い、何?

「アッキー、無視かよ。」

ご機嫌な顔でご機嫌急降下の圭人がいた。

「お、おはよう圭人。今日もいい天気だな。」

「曇りだろ、相変わらず馬鹿だなぁアッキー。面も悪くて頭まで悪くなったらおしまいだぜ。」

悪かったな、不細工で。
でも人間大事なのは中身だぞ。

俺は将来、見た目なんかじゃなく本当に性格の良いコと付き合うんだ。
優しくて、笑顔が耐えない女の子がいいな。
そんで行く行くは結婚して、子供は3人くらい欲しいなぁ。
最初は長女だよ。うん。
そんでまなみの結婚式には家族で出席だ。



「だから顔が弛んでたらキモいって言ったろ」


再び悪魔の暴力が頭を襲う。

俺また彼女作れるのいつになんだろ…







「彰宏、何でこんなとこで飯食ってんだよ。行くぞ。」

体育倉庫の裏、いつものようにそこで他の一年男子達と昼飯を食ってたら、突然現れた寺門が悪態を付けてきた。



 
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