シリーズ
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「何ぃい!?まなみに家庭教師をつけた───!!??」
「うん。まなみ、進学校の伍香春(ゴカワラ)高校受験したいんだって。今の学力じゃちょっと厳しいらしくてね。だったら早めに行動した方がいいでしょ。」
当然のように言う母さん。
いい、いいと思う。まなみが頑張るならお兄ちゃんも応援する、勿論。
しかし、しかし…!
「何で男なんだよ!?」
そうだ、大問題はそこだ。
今日、我が家に訪れた背の高い男。
「こんにちは。今日から家庭教師をさせていただく事になった梶田恭平と言います。お母さん、いらっしゃいますか?」
軽く茶色に染めた短い清潔感のある髪、黒縁眼鏡、良い人そうな笑顔。
玄関先で出迎えた俺はまぁ
「…どうぞ。」
と焦って普通に家に上げてしまったわけだが、失敗した。
梶田恭平、K大の3年生だという。
容姿も学歴もばっちり。
大変だ。うっかりまなみが手を出されてしまうかもしれない…!!
『ここの問題はこう…』
『はい、こうですか?』
『そう。まなみちゃんは素直で良い子だね、覚えが良くて先生嬉しいよ。』
『…っそんな、先生が教え方上手いから…っ』
『そうかな…?ねぇまなみちゃん、俺、他の事も教え方上手いんだけど…試してみる?』
『っ先生…?』
「お前、何か変なAVでも見たの?」
力説を終えた俺に、圭人は呆れ返ったような半眼の視線を向けて言った。
何を言ってるんだお前は!
「AVじゃねぇ!これは今そこにある危機なんだよ!現実なんだよ!」
うちの嫁入り前のまなみに変な虫がつくかもしれないって時に…!
お前じゃ話にならん。
まなみの部屋に隣接している壁にあてた筒を持ち直し、耳の位置と調整する。
うん、変な物音はしない。今のところ無事なようだ…。
「で、お前はいつまでそこでそんな忍者みたいな格好で張り付いてるつもりなのよ、アッキー。」
ベッドの上で雑誌見ながら圭人が聞いてくる。
そんなん、帰るまでに決まってるだろうが。
妹を守るのは兄の努めだ。
今時の若い男なんて、やれれば何だって良いんだからな…
いやもう、穴がついてれば男女の区別すらしないんだ。
恐ろしい世の中になってしまった。これから、例えば俺の子供が大人になる頃には文明が破綻しているかもしれない。
ダメだダメだダメだ!家族の為にも、ここで俺が頑張るんだ…!
「そんなに危なそうな男だったのかよ?」
圭人が壁に張り付いてる俺の横に移動してきた。
む、お前も漸くこの危機感が伝わったのか。
「カッコ良いんだよ、それに無駄に良い人そうっつか…。まなみが惚れたらマズいだろ。まなみが本気なのに遊ばれちゃったりしたらさ。」
うわっ自殺とかしかねん。
今時の中学生はナイーブだし…
ふうんと、圭人が言う。
「ああそう。お前は男を見る目がぜんっぜん無ぇからなぁ…。アッキーが誉めるんなら、その男本当に危ないかもね。」
ん?何か俺貶されてないか?
まあ良い。お前、今日は話し分かるじゃないか。
「そういうことだ。まなみの純情は俺が守る…!」
ん!?隣から声が…!
まなみと梶田の笑い声。
くそ、楽しそうに談笑しやがって!うちのまなみに手を出したらただじゃすまさんぞ!!
「まぁなぁ。まなみちゃんに危害が加えられるのはヤだし、俺も協力してやるよ。」
ニコッと笑った圭人。
え!?お前も!?
何だかんだで良い奴だよなお前…!
やはりあれだ、持つべきものは幼なじみだな。
じゃあ圭人にも筒を渡してやらないと。
机の上を漁ろうと振り向いて、そうして俺は圭人に引き倒された。
…………
うお!?
「ちょちょちょっ圭人っ!?おまっお前何してんだよ!?」
「教え子の兄貴の部屋から妙な音が聞こえてくる→明らかにヤッてる→覗く→男にガンガン掘られてヨガッてる兄貴目撃→不細工っ怖っキモッ無理!→ホモ怖い→逃げよう→二度と来ない。」
「そんなん俺が嫌ぁあああ!!」
「もう黙れよ。まなみちゃんが可愛いなら覚悟決めろ。」
「う…っ」
んな無茶苦茶な!
やめさせようと必死に押し返すも、そもそもマウントを完璧にとられ動きを封じられているこの姿勢じゃ無理。
痛ぇえ!首に噛み付いてやがるこいつっ
「けいと…っ噛むなよおぉっ」
「無理、アッキーってめっちゃ噛みたくなる。」
言った圭人の目は、獲物を狙う肉食獣みたくぎらついている。
こっ怖ぇえよお前!
つか噛みたくなるって、何でそんな無駄に野性的なんですか貴方は。
それが女子にモテる秘訣なのか?
いや今って草食男子流行ってなかったか?
圭人が強引に俺の服に手をかけ脱がそうとしてくる。
わわわわわっ伸びる伸びるっこのシャツけっこうお気に入りなんだぞ…!
「待てっ脱ぐ!自分で脱ぐから…!」
シャツを脱いで、綺麗にたたんで脇に置く。