シリーズ

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カララッ


「アッキー、ちょっとウィー貸してウィー。」

「おー、テレビの下。」

「セッティングしろや。」

「…………」

窓を開けて入ってきた圭人にいきなりこき使われ、ゲーム機の準備。
つか自分でやれよ、借りに来た人の態度かよそれ…
今更か…

つか

「んだよ圭人、自分ちじゃ出来ねーのかよ?」

「今兄貴が使ってっからさ、寛大な俺様が譲ってやったの。」

「ふーん。」

その寛大さを今直ぐ俺に使ってくれ。

圭人がゴムで前髪を縛り結い上げている。
やる気マンマンらしい。
つー事は当分ゲームに熱中してる筈だから、とんでもない事とか言い出さないだろう。
本の続き読めるな。

「ホラ、準備できたぞ」
後はソフトを入れるのみ、で圭人に場所を譲る。

圭人のピンクの頭を見ながら、ベッドに横になった直後だった。

ガチャ…

「アキ兄〜、今いい…?」

弟の和浩が扉を開けたのは。







「隣の悪魔8」





「あ、圭人君もいんじゃん〜、元気?」

「んー?ボチボチ?」


圭人と笑顔で挨拶を済ませた和浩が、扉から顔を出したまま俺を見る。

あそっか、


「気にすんなって、勝手に入れよ。」

許可を出せば、和浩はあんがとっと笑顔で言い、ベッドに寝そべる俺の横に腰掛けた。

「アキ兄、風呂入った?」

「え?ああ、さっき入ったけど…どうした?」

「えーマジで。じゃあさ、昨日父さんがボディーソープ詰め替えようとして、間違ってシャンプー詰めたの知ってる?」

「なにゃー!?」

なんっじゃそりゃ!?

クンクンと俺のシャツを捲り、腹あたりの匂いを嗅ぐ和浩。

「あー大丈夫そう。多分母さんが入れ替えた後に風呂入ったんじゃん、ギリギリセーブだったね。」

「本当か?はー、ったく、親父たまに家のことやるとこれだよ…」

笑顔の和浩に俺も安堵の苦笑いを。
うちの親父はどっか抜けてるからな…
危うく被害者になるとこだったぜ…

「で?何か用があったんじゃないのか?」

和浩のサラサラの頭を撫でながら言ってやれば、あ!と叫びがばりと身を起こす。

何だ何だ、どうしたんだ一体…!?

「圭人君もいるし、ちょっと聞きたいことあんだけど。」

圭人もその言葉につられ振り返る。

「女とエッチする時、どうやってる?」





えっ





「おおっ女とエッチぃい〜!?」

何を!?何を言ってるんだ中学三年生!?

「そう。いやこの間彼女とヤったんだけどさあ、なぁんかぎこちなくて気持ち良いとかの前に大変で。彼女には痛いからもうしない!とか言われるし…」

和浩は長い黒の頭髪をワシャワシャと掻きながらバツの悪そうな顔をしている。

てか、そんな、和浩…!
兄ちゃんでさえお前、初エッチまだなのに…!

やばい、何だこの気分は。
衝撃だ、イヤ絶望か。

何故なんだ、初体験を終えているというだけで、こんなに男としてでかく見えてくるのは…!?

「なあアキ兄、兄貴はエッチの時どんな手順ですんの?」

「えっ」

いつもは割とチャラチャラしてる和浩が、真剣な目で見てくる。
嘘だろ、俺この状況で「まだ童貞ですが何か?前カノとはキスすらせずに別れましたが?」とか言えねえ。
兄貴の威厳丸潰れだ。

つか何で俺にそんな事聞くんだよ〜!
お前らと違ってこんな不細工な俺が無事にエッチとか済ませてるわけないじゃん!

嫌がらせか!?いや和浩はそんなキャラじゃねぇし。真剣な分質が悪すぎる…

「えと、あー…。まずはそうだな、雰囲気とか作って…」

「雰囲気?どうやって作んの?」

う!それは一応経験したお前の方が分かってるだろ…!
知らねぇよ俺が聞きてぇよ!


「ヤっても良いよって雰囲気が、女からポンて出んだよ。」


ゲーム機の電源ボタンが押された音。
寝転がった俺を強制的に座らせ、隣に座ってきたのは圭人だった。

「マジで?それってどんなの?」

和浩が目を輝かせ圭人に意識を向ける。
た、助かった…!

「まあそれはこの間までチェリー君だった奴にはちょっと難しいからね、とりあえず大体の手順だけサラッと教えてやるよ。その後、雰囲気の掴み方な。」

流石圭人。
悔しいがこいつはモテる。経験人数も結構な数に上るはずだ。
圭人なら色々教えられるだろう。
つか圭人居て助かったぜ…。兄の威厳丸潰れ寸前だったもんなぁ。はぁ〜

「とりあえず、そんな雰囲気になった後な。キスは外せねぇだろ。女の子ってのはエッチ云々より、相手の体に密着してたい生き物なんだよ、最初。」


 
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