シリーズ

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寺門は何だか残念そうな顔で、首を横に振る。


「肩のとこ、乗ってるぜ、女が。」

えええええ〜〜〜〜!?

「ちょちょちょちょっえええええ!?え!?え!?」

思わず立ち上がり背後を振り返る。
近場には何にも無くて、奥に空の本棚が見えるだけだ。
つか何!?え!?女!?え!?

「あ、今肘がぶつかった。怒ってんぞ。」

「ええ!?ごっごめんなさい…!」

「あもうダメだ。今クワッ!て顔してるぞ!」

「うわあああああ!!」

クワッて何クワッ!て!?

たまらず寺門にしがみついた。
つか何寺門見えるのか霊感あるのか!?

「なぁ彰宏、このままじゃお前取り殺されちまうぜ…」

「っ」

寺門が真剣な顔で俺の顔を覗き込んできた。
嘘だろ、俺助かったんじゃないのかよ…!?
何か言われてみれば右肩が重いような気がしてきた。
俺っこの先どうなるんだ!?

「彰宏、助けてやろうか…?」

「え」

寺門の色素の薄い綺麗な目が、俺をジッと見ている。
長くすらっとした指が、俺の顎を持ち上げた。

「せんぱ…祓えるん、すか…?」

「ああ、出来るぜ…?ただ、な…」


寺門が目線を外し、難しいような顔をして口ごもる。
何、何ですか、どうしたんですか!

「寺門先輩…っ」

「ああ、出来ることは出来るんだが…色々やることがあってめんどくせぇんだよな…」

オレンジの髪をかき上げ寺門が言う。
そんなアナタ!アナタめんどくさいって俺の命が掛かってるのに…!


は!?いや確かに寺門に俺を助ける義理はこれっぽっちもねぇし…!
あああああっ俺はどうしたらいいんだ…!

「てっ寺門先輩…!」

「ん?」

「俺っ俺何でもします…!だから、祓って下さいお願いします…!」

もう意地もプライドも何も無ぇ。
ここで何とかできなきゃ俺はまなみの結婚式に出席することも脱童貞することも叶わないんだ。
いや第一そんな花子さんとか背負ったままで家に帰れねぇ!お母さんに殺される!

「そうか、分かった。」

「本当ですか!?」

「ああ。彰宏…本当に何でもするんだよな…?」

真剣な眼差しの寺門に確認するように言われ、俺も決意を込めた目で頷く。
ここで何とか出来るならするしかない、俺霊媒師の知り合いとかつてとかないし。








「…本当にこれで祓えるんですかね…?」

「何言ってやがる、俺は今までこの方法で成功してきたんだ、信用出来ないなら辞めても構わないんだぜ?」

「!いやあのっそういうワケじゃないっす、すみません…」

何て言うか、何て言えば良いのだろうか。

平たく言えば、俺は今パンツだけ身に着けた間抜けな格好で寺門と向き合うようにその膝の上に座っている。

いやちょっと待て平たく言い過ぎたみたいだ。
違うんだ、男同士で変な事をしてるわけじゃないんだ断じて。
これは徐霊に必要なことなんだ。いや良く分からないがそうらしいんだ。

「おー相変わらずスベスベだなぁ。乳首も可愛い…」

「っ!?ちょっと…っ」

俺の胸の真正面に陣取っている寺門が、手で胸や腹を触ってきた。何すんだ。

「っと、暴れんなよ。俺はこれから命を危険に曝してまでお前の徐霊をしてやるんだ。お前の体を隅々まで調べる必要があるのは当然だろ。」

寺門が綺麗な顔のまま当然と言わんばかりに言い切る。
そうなのか、徐霊ってそういうもんなのか。
俺さすがにこんなの他で体験したことねぇからな…

「さて彰宏、いいか。俺はこれから徐霊のための儀式をする。成功させるためには、実際に霊に取り憑かれているお前のやる気が必要だ。俺の言うことに従わなかったり、疑ったりしたらもうそこでおしまいだ、分かったな。」

その見たこともないくらい真剣な表情に呑まれる。


 
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