シリーズ
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ギリギリと腕を掴み合い睨み合う。
この白黒ヤンキー、康平のダチか?
は!?うわわわわっやべぇええ!俺康平を襲ってるとこ思いっ切り見られてっ
「なっあんたが!?」
奴はぱっちりとした二重の目を見開いて一気に引いた。
上はハイカラなシャツ着て、下は学生服だけどチェーンジャラジャラぶら下がってるし腰パンだしこれこいつ絶対ヤンキーだろ。耳もピアスだらけじゃねぇか。
何でこんなのと康平が知り合いに…
俺から距離を置き、射殺さんばかりの視線で睨みつけながら、奴は低く唸るように言い放った。
「絶対に許さねぇ…」
奴の名は谷古宇拓真君。康平と同じクラスで今のところ親友、らしい。(自称なので本当に親友かは分からんが。)
まあ勿論谷古宇君も最初は康平を「やかましい猿」認識で見ていたそうだ。
以前康平が話した「二年の先輩の頭に黒板消し事件」も何やってんだか、と呆れて見ていたらしい。当然だ。うちの康平は阿呆過ぎる。
そして一年にしてヤンキー街道まっしぐらな谷古宇君は、当然健全野球少年な康平と特に接点もなく新入生生活をスタートさせていたわけなのだが、ある日事件が起きた。
一年にして頭が黒と銀のアシンメトリーとかそんな外見だったため、上級生の不良グループの連中に絡まれたのだ。
一階の東トイレ前廊下にて、1対5で囲まれてしまったと。
袋にする気満々の先輩グループ、一匹狼な為助けも期待できない谷古宇君。
たまに他の生徒が通りかかるが、慌てて逃げていくだけで当然助けになんて入らない。
まあこんなもんだよな、谷古宇君が最悪病院行きを覚悟した時だった。
『バビューン!』
『ぐおっ』
一番後ろに立っていた背のデカいのが、何かにタックルされて盛大に転倒したのは。
何だ何だとどよめく谷古宇君や先輩グループの前で『とう!』と立ち上がったのは、クリクリ坊主頭のチビ猿、そう康平だった。
『いっけないんだー!こんな大勢で一人相手にー!』
ニッと笑いながら言う康平に、当然先輩達は烈火の如く怒りを爆発させた。
それでも怯まない康平。徐にポケットの中から何か取り出し、口にした言葉は。
『ゴキブリ爆弾発射用意。』
「ゴキブリは本物で、二年共は散り散りに逃げて行きました。」
「あ、ああ、そうか。」
谷古宇君の話を聞きながら何とか相槌を打つ。
いや康平、お前良いことしたけどそりゃ上の不良共は怒るわ…!
しかもカツアゲから助けたってまさかコイツ?
カツアゲじゃないししかもこんなヤンキー絡まれて当然だよ何故お前が助ける…
「康平君、その後の上級生からの呼び出しも、「俺が呼ばれただけだからお前は気にすんな」って、絶対俺を連れていかなかったんです…。俺、あんな場面で人に助けて貰ったのも初めてだったし、康平君みたいに男らしい奴に出会ったのも初めてでした。」
語る谷古宇君の表情は真剣だ。
しかし康平、お前学校じゃ悪戯坊主なだけじゃなかったんだな。
兄ちゃん嬉しいよ、嬉しいけどあんま危ない事はしないで欲しい。
「でも元はと言えば俺のせいだし、呼び出しがかかる度にこっそりついて言ってたんです。したら、半月前くらいに三年が、康平君を男にレイプさせるなんて言い出して…っ」
「えっと…」
うわ、どこかで聞いたような話が…
「俺もうマジでヤバいと思って、俺が何とかするから康平君はもう逃げてくれって言ったんです!それでも康平君は「大丈夫だって、アテあるし」っていうだけで…!」
テンションが上がってきたのか、谷古宇君の語気が荒くなってきている。
何かこっから爆弾投げ落とされそうな予感が凄いするんですが、願わくば外れてくれマイシックスセンス。
「…っで、先週…また三年に呼び出された康平君をこっそりつけてったら…「兄貴とやったけどもう無理」なんて言ってるし…!」
はい爆弾落ちた!
「結果的には助かったけど、あんた人としてどうなんすか!?頼まれたからって、男同士でしかも10も年の離れた弟をやっちまうなんて人としてどうかしてるよ!」
グッサァアアアアアア!!
もの凄い剣幕で谷古宇君が言った言葉が胸に突き刺さる。
いや俺も思ったし、勿論自覚してんだけど…!
最初は酔っ払いだったんだよ…!
「そりゃああんたはそんな良いガタイでしかもそのツラだから経験人数も豊富だろうし、その中に康平君が交じったってどうってこと無いだろうけど…!康平君は間違い無く生娘だった筈じゃねぇか…!」
その通り、その通りです。
俺は女も知らねぇまっさらな康平やっちゃいました、グチャグチャにヤリ倒しちゃいましたそれも2回も。そんでさっきも襲おうとしてました。