シリーズ
□12
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「おいアッキー、今から俺んち移動。」
「は?」
寝ようと布団に入ろうとした矢先、突如窓を開け顔を出した圭人の言葉に眉をしかめてしまう。
今からって、もう8時だし…俺眠いんだが…
「ヤだよ、俺眠ぃし…」
「ははは、お前寝るの早すぎね?小学生かよ?」
笑顔で対応した筈の圭人に胸倉を掴まれ引きずり起こされ、そのまま長浜家に強引に連れ込まれた。
窓の枠に打ち付け擦られた脇腹や背中がいてえ。
つか何?何なの…!?
「飛鳥が明日日曜で休みだし飲み会しようってよ。」
「飲み会…!?飛鳥兄ちゃんがか?いていてぇっ分かったって!」
だから早く立てよと急かす悪魔にどつかれながら何とか立ち上がる。
圭人に続いて長浜家の二階廊下に出た。
つか飲み会って、酒飲むのかこいつら…
「隣の悪魔12」
「彰宏、遅かったな。」
「え?あ、ご、ごめん…」
飛鳥兄ちゃんの部屋、テーブルに酒の準備をしている飛鳥兄ちゃんに言われとりあえず謝る。
遅かったか俺?かなり早急に引き摺ってこられたんだが…
飛鳥兄ちゃんが開けた冷蔵庫の中には酒の缶がギッシリ詰まっている。
つか酒しかねぇのかな、俺あんま飲みたくねぇなぁ、第一未成年だし駄目だろ…
カーペットの上に腰を下ろす。
圭人はベッドに腰掛け缶酎ハイのプルタブを開けていた。お前飲む気満々か。そりゃそうだよな、しょっちゅうどっか飲み会だって遊びに行ってるし…
「彰宏、お前酒は嫌いか?」
「あー…ちょっと、好きではない、かな…」
訊かれ答えれば、飛鳥兄ちゃんに渡されたのは烏龍茶の缶だった。
礼を言って飲み始める。
烏龍茶独特の苦味が喉奥を通過した。
「学校はどうだ。」
「んー?可もなく不可もなくって感じじゃん?いや、あんま可愛いコいなくてちょっとつまんないかも。」
「へぇ、まあお前からするとそんなもんかもな。」
「飛鳥は彼女とかまだ作んねーの。」
「今は要らない。」
目の前で長浜兄弟の会話が繰り広げられる。
圭人が飛鳥兄ちゃんにじゃれかかったり、飛鳥兄ちゃんが圭人の頭撫でたりとか、この二人は本当に仲が良い。
マジで俺居なくてもいいよな…やっぱ眠くなってきたし…
帰って眠りてぇ…明日まなみと出掛けるし…。
…楽しみだ。うん。ふはは。
「彰宏。」
「わっはいはいっはい!?」
「ただのお茶もあるぞ。飲むか?」
「ありがとうございます。」
チビチビやっていた烏龍茶は無くなっていた。
飛鳥兄ちゃんに手渡されまたプルタブを開ける。
二人はもう結構飲んでるな、すげぇペースだ、何なんだこの人達。
「彰宏、そういやほら、これもうクリアしたからお前データ消して最初からやっていいぞ。」
「え?うわマジで!?いいの!?」
「ああ、もう俺はいい。」
飛鳥兄ちゃんが本体ごと貸してくれたのは、ついこの間発売されたばかりのモンスター育成ゲームだった。
消す前に試しに飛鳥兄ちゃんの記録で遊んでみる。
うわすげぇ、プレミアモンスターとかレアモンスターとかも捕まえてる。つかレベル高ぇー、強ぇー。
「アッキー、お前酒飲まないでゲームすんの?」
「ん?んー、悪い。」
お!この技カッコイイな…!前のシリーズの時無かったよな…!?
「アッキー?ゲーム止めろって」
「もうちょっとやったらな、はいはい、」
うわこんなモンスターいたっけ!?ちょい不気味だな。お?おお〜、そうくるか。
「…彰宏…」
「おい圭人、いいじゃないか。それよりホラ、酒作ってやるから飲め。」
「えー!?アッキーつまんね…」
何とでも言え。このゲームがやれるなら別に構わん。
飛鳥兄ちゃんの記録で遊ぶだけでもかなり楽しい。
最初はどんなモンスター捕まえてどんなパーティー組もうかなぁ…
「え!?22時!?」
セーブ画面の上に出た時計を見て仰天してしまった。
楽しさに熱中してしまい、もう2時間近くも経過している。
つか俺!明日出掛けるしもう寝ねぇと!
「そうだな。下着まで完全にしてこそ、だな。」
「ガーターとか良くねぇ?付けちゃおうよ〜」
何の話題だ?
現実世界に意識が戻った俺の耳に届いてきた会話に目線をやる。
ベッドの上に何かを並べ真剣に頷き会う黒とピンクの二つの頭。
ベッドの上には、綺麗に並べられた女子の制服があった。
えーーーー!?
ガタっ
ドン引きして動いた拍子にテーブルにぶつかり派手な音が出る。
それに反応したのか二人が勢い良く振り返った。
二つ並んだ超美形。
まさか、まさかお前ら…!
「な、き、着るつもりなのか!?それ…!?」
いや似合うかも、似合うかもしれないけどどうしてそんな事になったのたった二時間の間に!