シリーズ
□13
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俺もう高一ですよ…?
駄目なんですか?高一男子ですよ…!?
反論しようかと思ったが、「保護者として」と飛鳥兄ちゃんが言った事を思い出す。
…そうだよな、俺は勝手に成長した気でいるが、飛鳥兄ちゃんからしたらまだまだガキなわけだし、きっと危なっかしく見えるんだろうな。
俺だって和浩やまなみには同じ反応をするだろう。
考え込んでいる間に車が止まる。
あ、赤信号か。
ん?飛鳥兄ちゃんの顔?
えっ
飛鳥兄ちゃんの顔が近付いてきたと思った次の瞬間には、唇同士が重なる感触。
ぬるっと口の中に入り込んできた柔らかいものにビックリして目をきつく閉じる。
散々に口の中を撫で回されて、舌を絡め取られて。
気持ちよさに体がゾクゾクと震える。
いやらしい水音が車内に響いていた。
「んっはっあ…っ」
「…こんなに隙だらけで、一人で海になんか出してやれるわけないだろ。」
解放された唇、俺の頬にキスをして離れていった飛鳥兄ちゃんを、まだ霞む頭で呆然と見上げた。
飛鳥兄ちゃんは何も無かったような何時も通りの涼しい表情で、もう車を走らせている。
ちょ、ちょっと待て。何だ、何が起きたんだ…?
熱くなった体と頭を急速に冷やす冷房に、嫌な予感と冷や汗がじっとりと湧く。
言うべき言葉が見つからず、俺は前を見て黙り込んだ。
いや忘れろ俺、今のは多分…事故だ。アクシデントだ。
じゃなきゃ何故飛鳥兄ちゃんが俺にキスなんかする。
キスで強引に熱くされた体に、嫌な記憶ばかり蘇る。飛鳥兄ちゃんが俺にキスするのなんて、や、ヤる時ぐらいじゃ───
いやそんなワケねぇ、きっと今のはからかわれたんだ。
再び車が止まる。
また赤信号か、見上げると、そこはだだっ広い駐車場だった。
どうやらどこかの公園らしいのは、遠くの街灯が照らしている景色で察することが出来た。
…………んん?
「飛鳥兄ちゃん?」
「彰宏。」
「わ!?」
ガチャ。シートベルトを外した飛鳥兄ちゃんが、暗闇の中のし掛かってきた。
な、何だ!?
「ななっ何すんだよ!?」
飛鳥兄ちゃんの肩を掴み接近を止める。
切れ長の目が少しだけ細められたのが見えた。
「狭いな。」
「は!?」
謎の呟きをした飛鳥兄ちゃんが今度は俺から身を離して、扉を開け出て行ってしまった。
そのままフロントを回り俺の側に歩いてくる。
ガチャリ。扉が開く。
「降りろ。」
「なっ何で?わっ」
質問に答えてすらくれず、飛鳥兄ちゃんは俺のシートベルトを外して腕を掴み、強引に車から引きずり出した。
夜の公園。車外に出され、不気味さだけが募る。
熱い空気に晒されじわりと汗が滲んだ。
何でこんなとこで下りるんだ?何かあるのか…?
こっちだと言われついていくと、そこにはベンチ。
ん?休憩したいのか飛鳥兄ちゃん?
そうだよな、仕事終わってそのまま出発したみたいだし、疲れてんのかもな…
しかしこんな夜の公園、それも真夏のこの時期にわざわざこんな場所で休まんでも。
「ちょっと両手を出してみろ。」
「え、うん。」
言われるがままに飛鳥兄ちゃんに両手を差し出す。
首からシュルリとネクタイを抜き取った飛鳥兄ちゃんは、それでそのまま俺の両手首を纏めて縛り上げてしまった。
暗闇の中、ネクタイで縛られてしまった手首を見つめる。
え?
「あの飛鳥兄ちゃんっこれはっ」
「久々に鍛えてやろう、彰宏。」
「はああああ!?」
何を!?と訊く間も無くベンチに押し倒され、続け様にのし掛かってきた飛鳥兄ちゃんを必死で縛られた手で押し返す。
「やめろよ飛鳥兄ちゃんっ俺嫌だ…っ」
「抵抗はするんだな。ただな、手を縛られた時点で失格だ。」
「…!む、無茶苦茶言うなよ…!それに、特訓しなくて平気だ…っ俺、最近はちゃんと逃げられてるし…っ」
とりあえず、ここ二週間は無事に過ごしているのは本当だ。
圭人も遊び歩いているらしくあまり会わねぇし、寺門や名張さんも回避したまま夏休みに突入している。
このまま平穏な暮らしを取り戻せるんじゃないかと思っていたのに、こんなところで挫けてたまるか…!
「じゃあやっぱり確かめないとな。お前がどれくらい流されない男になったのか。」
「む…っ」
胸を押し返す俺の手を強引に押し下げて、飛鳥兄ちゃんがまたキスをしてきた。
うわぁああーっ今度は事故なんかじゃねぇぞこれ!誰か助けてくれ…!
「んんん…っ」
濡れた舌が、俺の唇をなぞるように這う。
上唇、下唇と軽く飛鳥兄ちゃんの唇が挟んで、柔らかい感触にくすぐったくなる。
唇の間を飛鳥兄ちゃんの舌先がゆっくりと移動する頃には、唇が開いてしまっていた。
深く密着した唇、ぬるりと濡れた舌が侵入してくる。
「んんぅ…っ」
縛られた両手がびくりと跳ねた。