幸せ家族計画U

□あ
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とある中学校の一年生の教室。

数分前に既にチャイムが鳴ったにも関わらず、自分の席に後ろ向きに座り、黒板に背を向けたままの少年が一人。


金色の髪に王冠を乗せたなんとも違反的な姿だが、その艶やかな髪は自前であるため注意もできない。

まあ、教師が何度言っても外さない王冠や直さない着崩された制服からして、彼に何を言っても無駄だろうが。

そんな一種の諦めを感じられている―何かあっても「黄次だから」の一言で片付けられることが多い―彼、黄次ベルフェゴールは、友人である雲雀リョーマの机に広げられたら漫画とお菓子に夢中だった。

しかし上記の通り、既にチャイムは鳴っている。

つまり授業は始まっているわけで。



「おい」



「…………」



「おい、ベル」



「んー?何?オージ今超忙しいんだけど」



「祐太もお菓子食べたいんじゃない?」



「ちげえよ」



ベルフェゴールと同じく漫画片手にお菓子を食べているリョーマの言葉に、その隣の席に座る祐太が素早く突っ込む。

この自由人二人に突っ込めるのは―というかむしろ突っ込もうとするのは―もはや彼くらいであり、この席の配置からもクラスメイトや担任の意図が伺える。

つまりは二人を何とかしてほしい、とそういうわけだ。

ちなみに彼は周りから密かに「苦労人」だとか「オカン」だとか呼ばれているらしいのだが、もちろん本人は知らない。

とはいえ、突っ込めるもとい注意できるからと言って、それを受けた相手が素直に従うかというと―まあ、そんなわけもなく。



「チャイム鳴ったんだからさっさとそれ片付けて前向け」



「えー」



「えー、じゃない」



「ケチ」



「ルールを守れ」



周りのクラスメイト達が心の中で密かに応援しながらこの二人の甘えたな子ども達とお母さんを見守る中、ポンポンとリズムよく交わされる会話。

そしてそれは、ドンドンとヒートアップしていく。


――しかし忘れてはならない。

今が何の時間で、ここがどこかということを。



「うお゛おい、お前らぁ゛!」



実は最初からこの教室にいた教師、スクアーロの大きな声が響く。

その声に、一瞬シンと静まり返る教室。

声をかけられた三人のうち、口に無理やりお菓子を入れられていた祐太は本来の目的を思い出したのかハッとした表情となり、その周りの二人は――



「ん?何だよスクアーロ」



「っていうかいたんだ」



その教師をなめきった態度に、彼らの担任であり数学の担当教師であるスクアーロは、はああ、と深い深いため息をついて。





後でお前ら職員室な。

((ええー))(ええーじゃねええ゛!当たり前だあ!)(すみません、先生)(いや…お互い苦労すんなぁ゛)



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