幸せ家族計画U

□ふ
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夏休みが終わり、やっと休みボケが抜けだす頃。

秋も深まる10月、雲雀家の下の兄妹たちが通う中学では体育祭が開かれようとしていた。

体育祭では3学年を混ぜた状態で3色に分けて行われるのだが、中にはクラス対抗で行われる2000mリレーというものがあった。


クラス対抗リレーは、100mを走る女子と200mを走る男子からメンバーが選ばれ、その人数については規制はない。

とにかく合計2000mを走りきれば良いため、極端な話女子20人で走っても、また男子10人で走っても構わない。

そこは各クラスの采配次第というわけだ。

とはいえそのメンバーに選ばれる者には、勿論共通点がある。

それは当たり前のことだが、皆足が速いということである。

となると、比較的運動部の人間が多く選ばれることになって――



「どーこ行こうとしてんのかな?ピヨシ君」



にっこり。

それはそれは素晴らしい笑顔で今まさに教室を出ようとしていたクラスメイトの肩をつかむのは、この学校の現生徒会長でありこのクラスの中心人物といえるだろう少年、雲雀綱吉。

一方彼に肩をつかまれた日吉はといえば、不機嫌そうな顔をしてそちらを振り返り。



「見てわからないのか?」



「ピヨシこそ、見てわかんないの?」



テニスラケットの入ったカバンを見せながら問えば、リレーのバトン片手に返される言葉。

そう、部活に所属している少年少女たちが部活動に励む放課後、しかし彼らのクラスはクラス対抗リレーの練習をしようとしていたのだ。

ちなみに対抗リレー上位のクラスには生徒会が考えた何らかの賞品があり、そのため皆練習を重ね本気で勝ちに来るので優勝争いには全く関係ないにも関わらず毎年とても盛り上がる。



「俺はテニス部のレギュラーだ」



「リレーの選手でもあるよね?」



「部長でもあるんだが」



「一度引き受けたことを投げ出すんだ?」



「……」



眉間にシワを寄せた日吉と、それに笑顔で即答する綱吉。

その攻防を固唾を飲んで見守るクラスメイト達。

賞品に期待している彼らとしては、応援しているのは綱吉の方だ。

ちなみに日吉と同じく部活に行くつもりだったリレー選手は、綱吉の笑顔を見た途端荷物を置いた。

それは賢明な判断だったと言えるだろう。

彼の笑顔に逆らえるのは、このクラスにはザンザスか日吉しかいないのだ。



「…ねえ日吉?」



とそこで、綱吉は笑顔はそのままに、重苦しい空気を破るかのように優しい声で日吉の名前を呼び。

にこり、笑みを深めて首を傾げた。






部活とクラスの結束、どっちが大事だって?

(部活だな)(え?何?聞こえなかった)(部か…)
(え?)(ぶ…)(え?)(…)


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