幸せ家族計画U
□も
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「喜べ綱吉。3月からお前はこの学校の生徒会長だ」
「………………」
ある日のこと。
生徒会室に呼び出された綱吉は、そこで待っていた姉、景にそう言われ。
少しの間固まった後――にこり、笑みを浮かべて言い切った。
「お断りします」
「拒否権はねえよ。あーん?」
「辞退させていただきます」
「聞こえねえな」
並みの人間なら気圧されてしまうような雰囲気の綱吉に対し、しかし流石は姉というところか。
全く動揺する素振りも見せずに言葉を返す景。
それに綱吉は、貼り付けていた笑顔の仮面をかなぐり捨てて。
「何でよりにもよって俺なわけ!?」
「どうせ暇だろうが」
「これでも結構忙しいんだよゲームとかゲームとかゲームとか!」
「ゲームしかねえだろうが」
「大体俺生徒会の仕事なんて分かんないし!」
「大丈夫だ。俺様がしっかり教えてやる。分からないことがあれば聞きにくればいい。第一日吉もいることだしな」
生徒会長の机に両手をついてまくしたてる綱吉に、しかし景は余裕の態度で言葉を返す。
とそこで、景の口にした“日吉”という名前に、綱吉は実は同じ部屋で仕事をしていた生徒会メンバーの一人を指差して。
「そうだよピヨシがいるじゃん!俺なんかよりピヨシがやった方が絶対いいって!」
「……俺も人の名前を満足に覚えられないような人間の下で働くのは嫌ですね」
「ほら!」
暗に「人の名前を変に呼ぶんじゃねえよ」と言っていることなど気にもせず、むしろ同意が得られたと目を輝かせる綱吉。
しかし景の態度は変わることなく。
「却下だ」
「〜〜〜っ!」
その素っ気ない態度に、綱吉は拳を握り下を向いて。
少しの後、バッと勢いよく顔を上げた。
「じゃあ!!」
もうこうなったらじゃんけんで決めるしかないな。
(俺が勝ったら日吉が生徒会長!日吉が勝ったら日吉が生徒会長!)(どっちも同じじゃねえか)