幸せ家族計画V
□え
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――高校一年の夏。
一年生にしてテニス部レギュラーだった幸村は、大事な大会の試合で負け、そしてそのために、そこで彼の一度目の夏は終わった。
一年生でレギュラーに選ばれたこともあり、羨望だけでなくやっかみの目も向けられていた幸村は、それをきっかけに周りの人間に陰口をたたかれていた。
そんな、ある日のことである。
「幸村!ファミレス行くぞ!」
試験期間中のため、部活のなかったその日の放課後。
そんなディーノの言葉と共に、幸村は雲雀や骸に見送られながら、ディーノの言葉通りファミレスへと引っ張られるようにして連れて行かれた。
「……で、一体どうしたんだい?急に」
詳しいことは何も聞くことなく連れてこられた幸村は、そう言って呆れたような表情で向かい側に座る友人を見やる。
それにディーノは笑いながら教科書を取り出し、
「来週テストだろ?だから幸村に教えてもらおうかと思って。そのお礼に、ここは奢るからさ」
「………」
にこにこと笑いながら言ったその言葉に、聡い幸村はそれだけで全てを悟る。
おそらくこの友人は、自分を気遣おうとしているのだろう。
テニス部の先輩達に色々と言われている自分を。
ついこの間、今月は財布の中身がピンチだと嘆いていたにも関わらず。
「……ふふ」
「…何だよ?」
その彼らしい気遣いに、幸村はなんだか心が暖かかくなって。
自然ともれた笑みをごまかすように、幸村は口を開いた。
「ディーノが勉強するだなんて珍しいと思ってね。…明日は台風かな?」
その言葉に、ディーノはムッとした表情をするもすぐに笑みを浮かべて。
「俺だって勉強くらいするっての。…まあとにかくさ、」
遠慮なんかするなよ。そんなの今更だろう?
(本当?じゃあアレとコレとソレと、あ、あと―)(スミマセン少しは遠慮してください!)(ええー)