幸せ家族計画V
□お
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「ユータ腹減ったー」
「減ったー」
「俺は減ってねえ」
テストを翌日に控えた日曜日。
テスト前ということで部活が休みであるその日、リョーマとベルフェゴールは不二家の裕太の部屋に集まっていた。
とはいえきちんと勉強しているのは裕太だけで、残りの二人はと言えば飽きてしまったのかダラダラと寛ぎモードである。
ベルフェゴールに至っては教科書を開く前に漫画を開いており、裕太も初めは注意していたものの、今ではもう諦めている。
――毎度のことではあるし。
「なあユータ、腹減ったってば」
そう言って部屋の主の許可を得ることなくクッションを抱え、裕太を見つめるベルフェゴール。
その隣ではリョーマも何かを訴えるかのようにこちらをじっと見つめていて。
「…………分かったよ」
その熱い視線に負け、はあ、と深いため息とともに吐き出された言葉。
それに二人は、まるで子どものように無邪気にパッと表情を明るくした。
「それ食ったらちゃんと勉強しろよ」
「えー」
「えーじゃない」
「いいじゃん別に、俺オージだし」
「どういう理由だ」
裕太の作った料理を囲み、美味しそうに食べていくリョーマとベルフェゴール。
そんな二人に、裕太は美味しそうに食べてもらうのが嬉しいのか笑みを浮かべるも、しかししっかり釘はさす。
「でも実際さ、こんなの大人になっても使わないじゃん」
そう言ってリョーマが指差したのは、数学の教科書。
「…それ言ったら元も子もねーだろ」
裕太はそう答えたあと、「勉強が学生の仕事なんだよ」と続けて。
そして自然、無言になる三人。
その場にはリョーマとベルフェゴールの食事の音だけが響く。
「……なー」
「…何だよ」
黙々と食べることに集中していたベルフェゴールが、スプーンを止めそう言ってふと、声をあげる。
それに裕太が尋ねリョーマが先を促す視線を送れば、彼はスプーンで料理をつつきながら言葉を続けた。
「大人になったらオージたちどーなんだろな」
「……」
「……」
その問いの答えを考えているのか、またしても満ちる沈黙。
それを破ったのは、ふっと笑みを浮かべた裕太だった。
大人になったらなんてなってみなきゃわかんねーけど、大して変わんないのかもなあ、俺たち。
(確かに。こうやって三人で、裕太の作る料理食べてそうだよね)(ユータはオージがいない方がいんじゃね?)(ばっ…おま…っ!)(……?)