幸せ家族計画W

□だってそれがぼくなんですよ
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「あれ?骸くん?」



聞きなれない声で名前を呼ばれたのは、母の日に、つい2年ばかり前に自分の子供になった息子たちと共にスーパーで買い物をしていた時だった。



「やっぱり!骸くんだよね」



「ほら私たち、同じクラスだった!」



そう言って、キャアキャアと黄色い声をあげながら近づいて来たのは見覚えのあるような無いような、自身と同年代の―まあ相手は自分の元クラスメイトだと言うのだから同い年なのだろうが―二人の女性。

現在共に子供たちの親を―笑えることにあの唯我独尊、学生時代もそして今も色々な方面から恐れられている彼が母親役である。とはいえ彼とはヤオイだとかそんな間柄ではなく、今も昔もただの友人であり…彼が母親役なのは骸が巧みに仕組んだことではあるのだけれど―している恭弥ほどではないが、正直興味のないことは忘れる所のある骸である。

彼女達の顔など覚えていなかったが、そこはそれ。

にっこり笑って「お久しぶりです」と答えてやった。

すると分かりやすく顔を赤らめる女性たち。


こういう所が恭弥に「君って天然タラシだよね。それに八方美人」と呆れられるのであるが―まあ、穏便にことをすますには多少の嘘と笑顔はつきものだ。



「骸くんもこんなスーパーとか来るんだね〜」



そう言って「意外〜!」と笑う彼女たちだが、意外も何も骸はこのスーパーの常連である。

子供たちを引き取ってから雲雀家の主夫を務める彼は毎朝しっかり広告をチェックし、大学帰りに寄って帰るのが日課だ。

それは、骸が恭弥とともに四人の息子たちを養い始めてからずっと続いていることだった。


しかし彼女たちは、似合わないと彼女たちの理想でものを語る。

まあ、彼女たちにどう見られようと構わないのだが…浮かべた笑顔の裏で、骸は正直鬱陶しいことこの上なかった。



「あ、ねえ、良かったらあたしたちと一緒に…」



「父さん!」



とそこで、骸を遊びに誘おうとしていた女性の声が、幼い少年の声に遮られる。

それに三人がそちらを見れば、そこにはそれぞれ手に食材を持った息子たちがいて。



「はい、これ。見つけて来たよ」



そう言って牛乳を骸の持つかごに入れるのは、長男である亮。

十歳である彼が一番重い物を持ち、一番下のリョーマが一番軽い物を持っている。

そんな様子に骸は微笑みながら、「ありがとうございます」と言って四人の頭を撫でてやった。

ちなみに亮の持つ牛乳は賞味期限が長いのを選んでおり、それを誉めることも忘れない。



「お、父…さん……って…」



骸と亮たちのやりとりに、ヒクリ、頬をひきつらせる女性。

それはそうだろう。

なんせ一番下のリョーマでさえ今年で八歳。

ちなみに骸も話しかけてきた名も知らぬ彼女たちも、今年二十歳になる年齢なのだ。


その事実に困惑している彼女たちに、にこり、息子たちに向けたものとは違う「外用」の笑みを向けて。



「すみません、僕はこれから、息子たちとハンバーグを作るので」



そう言って、骸は息子たちの手を引きその場を去っていった。




だってそれがぼくなんですよ

(お母さん、喜んでくれると良いですねえ)(うん!)



*企画サイト「シザンサス様」提出


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