幸せ家族計画W
□クリスマス
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雲雀家に子どもたちがやってきてから、8年目の冬。
小さかった子どもたちも中学生、高校生となり、それぞれ部活や学校生活に忙しい日々を過ごしていた。
そんな12月、仲良くコタツに入ってみかんを食べていた子どもたちに、キッチン側にあるテーブルでお茶を飲みながらそれを眺めていた骸はふと思い出したように尋ねた。
「そういえば、今年のクリスマスは何が食べたいですか?」
「肉」
「カルピンの新しいおもちゃが欲しい」
「あ、俺ゲームでいいよ」
「ラケット」
「……僕が聞いたのは食べ物なんですけどね」
亮はテレビを見ながら、リョーマはカルピンの毛並みを整えながら。
綱吉はみかんの皮をむきながら、景は本を読みながら。
と、それぞれ骸の方を見もせずに返された言葉。
それに骸は、はあ、とため息を吐いて。
「昔はあんなにかわいかったのに…覚えてますか?僕や恭弥くんと一緒に過ごせたらそれでいいなんて言ってた時期もあったんですよ」
そう言って、ああ…、とわざとらしい動作で嘆いてみせる骸。
しかし子どもたちは、誰もそちらを見ることなく。
「だって皆でいるのは当たり前のことじゃん」
カルピンに視線をやったまま、何でもないことのように言うリョーマ。
その言葉に骸はキョトンとしたあと、その口元に笑みを浮かべた。
「…まあ、そうですね」
骸は知っていた。
彼らが、それぞれに部屋はあれどいつの間にか多くの時間をこの部屋で過ごしていることを。
共に過ごしたいと願ったあの日から毎年、母である恭弥がなんとか休みをとってくるクリスマスの夜は予定をあけていることを。
リョーマが当たり前だと言った家族でいる時間を作るために行動していることを。
それが意識してのことかそれとも無意識の行動かは分からないけれど。
そんな時間に、いつも骸も恭弥も力をもらっていた。
「…いつかは、恋人を優先するようになるんですかね」
ポツリ、小さく呟いたセリフには、嬉しさと寂しさが混じっていて。
いつの間にか大きくなっていた子ども達は、直ぐに親の手を離れるようになるだろう。
立派になって嬉しいけれど、この空間が失われるのはなんだか悲しい。
「何か言った?」
小さなつぶやきが聞こえていたのか、みかんから顔を上げて首を傾げた綱吉に、骸は「何でもありません」と首を振って。
皆で飾り付けたツリーに目をやり、ゆっくりと微笑んだ。
メリークリスマス!
――今はまだ、家族で過ごす日々を
(…ま、将来は孫が出来て家族が増えるかもしれないですしね)(それはそれで楽しみだね)(おや恭弥くん。お帰りなさい)