それでは誘惑の準備を
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201X年―――春
近年、犯罪発生率が急激に増加
特に首都圏での犯罪の凶悪化が問題となっていた
そこで警視庁はとある研究所と協力し
実験的に新しい捜査課を設立した
「――おい山本!沢田はどうした」
警視庁内のとある一室。
そう声をあげたのは、黒いスーツに身を包んだ、三十代くらいの男。
「へ?ツナなら仮眠室ッスけど…」
その問いかけに答えたのは、同じくスーツに身を包んだ青年。
しかしこちらは黒スーツとは違い、妙に爽やかな印象を受ける。
「仮眠室?…なにやってんだあのダメツナが」
「仕方ないッスよ課長ー、ツナここ連日徹夜だったから…」
そう言って山本が苦笑をこぼすも、課長の方はそんなこと気にする素振りも見せない。
「ったくあのダメツナが……今朝は朝一で俺の所に来いっつったってのに………絶対覚えててすっぽかしやがったな」
「あはは…」
最後にボソリ、低い声で付け足された言葉に、山本は乾いた笑いをこぼす。
それしか出来なかったのだ。
だって彼ならやりそうだから。
「にしても課長がツナ呼ぶなんて…あ、もしかして例の研究所から派遣されてくる?もう到着したんすか?」
「いや……まだだ」
「え……」
探し人である綱吉のもとへと向かう課長について行きながら山本が聞けば、返って来たのは思いもよらない言葉。
それにキョトンとして声をもらせば、課長はため息をついて続きを続けた。
「何の連絡もねえ…遅れてるみたいだな」
「精神工学…いわゆる超能力の研究所でしたっけ?本当に超能力とかってあるんスねえ」
切り替えの早い…というより細かいことを気にしない山本は、そう言ってあははと笑い声をあげる。
彼にかかれば、きっと宇宙人やネッシーが目の前に現れたって笑って受け入れるだろう。
「さあな。本当にあるかは分からねえ。…ただ、所長の楸博士は警視総監と旧知の仲らしい。今回の捜査課申請の話も楸博士の提案って話だしな。楸博士は大富豪でこれまでかなりの額の資金を警視庁に提供しているんだそうだ」
話しながらも、彼らの足は着実に目的地へと進んで行く。
「派遣されてくるのが男か女かも聞いてねえがな。無下にはできねえって訳だ」
とそこで、ふと何かに思い当たる山本。
この予感が間違いであってほしいと思いながら、彼は恐る恐るどこか楽しげな雰囲気を醸し出す黒衣の上司へと声をかけた。
「……なあ課長?もしかしてその人って――」
「ダメツナに押し付ける」
「(うわあ…)」
キッパリハッキリ良い顔で言い切った上司に、思わずひきつる顔。
しかしそんな山本を放っておいて、彼の上司はニヤリと悪い笑みを浮かべる。
「あのクソ生意気なガキには丁度良いクスリだからな」
「あ、あはは…」
きっとまた、親友兼同僚の元家庭教師現上司である彼と自分の親友は、笑顔で嫌な空気を作り出すのだろう。
先ほどの言葉を親友に告げた時のことが簡単に想像できて、思わず山本は気分が重くなった。
「沢田!」
そしてやって来た仮眠室。
職場だからと課長が名字を呼びつつバンと勢いよく扉を開ければ――
「!?」
「な……っ」
そこにあったのは、ソファーに仰向けに寝転がる美少女と――その上に覆い被さる綱吉の姿だった。
「何……してやがるんだダメツナがあっ!」
02
落雷発生
(…あ、リボーン)(……てめえ覚悟はできてんだろーな?)
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