幸せ家族計画

□あ
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――雲雀家の朝は、朝食の良い匂いで始まる。



「おはよ、父さん」



「ああ、おはようございます、綱吉くん」



ふああ、とあくびをしながら椅子に座るのは、この家の次男の綱吉。

一方、それににこやかに挨拶を返すのは、エプロン姿で料理を机に並べる父、骸。

主夫である彼は、テーブルに並んだ見事な和食―ちなみに日によっては見事な洋食になる―を作った本人である。



「母さんは?」



朝食が和食ということは家に帰っているのだろうと綱吉が問えば、返ってきたのは苦笑まじりの言葉。



「もうすぐ返ってきます。昨日は会社に泊まり込んだみたいですからね…朝食を食べたら寝るそうですよ」



とはいえ、仮眠程度のものでしょうがとため息一つ。

母―とはいえ立派な男性だが―である雲雀恭弥は、風紀財閥の社長である。

日々多忙を極める彼は、こういったこともよくあった。



「もうすぐ亮たちも帰ってくるでしょうし…顔を洗って、味噌汁をついでいてもらえますか?」



亮とは、雲雀家長男である。

彼と長女である景は体育部なため、いつも朝はロードワークに出ていた。



「ん、了解」



そう言って椅子から立ち上がった綱吉は、お願いします、と言ってキッチンを出ていった父の背中にそっちこそ、と呟いた。

骸は、未だ寝ている末っ子を起こしに向かったのだ。


母である恭弥は、風紀財閥なんてものを立ち上げるほどに、風紀にうるさい。

しかし少々喧嘩っ早い所もあり、またそれは昔から変わらないらしく、「そんなこと言って自分が乱してたじゃないですか」と骸にも言われているだが…それは置いておいて。


そんな彼が、寝坊を許すことはなく。

朝っぱらから親子喧嘩なんて―リョーマはさすが雲雀家の息子か、そこそこに強いため恭弥は楽しそうだが―近所迷惑、いやむしろ家族迷惑この上ない。

それを回避するため、骸はいつもリョーマを起こしに行く。


睡眠をこよなく愛する――というか、むしろ大変寝汚いリョーマ相手に、毎朝毎朝よくやるもんだと綱吉は苦笑をこぼし。

まずは顔を洗おうと洗面所へと向かった。






朝寝坊なんて母さんが許しませんよ!

(だからさっさと起きなさい!)(ん…あと五分…)

(ただいまー)(ああ、またやってんのか)(何、リョーマはまだ起きてないのかい?)(あ、お帰……母さん…!?)


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